「やっとか」地元関係者から歓喜と安堵の声<沖縄・奄美 世界遺産>


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生い茂るマングローブ林の回廊=2019年12月、西表島・竹富町上原

 琉球弧の個性あふれる豊かな自然が人類共通の財産として、世界遺産に登録されることが確実となった。推薦地がある沖縄島北部地域「やんばる」の3村と西表島は歓喜に沸く。学術的な価値だけでなく、観光資源としての活用も期待される。一方、北部の対象地域は緩衝地帯を挟まずに米軍北部訓練場に隣接し、影響を懸念する声もある。かけがえのない自然環境をどう守るか。厳しく、熱い視線が注がれる。

 国際自然保護連合(IUCN)が10日、「奄美・琉球」世界自然遺産の登録を勧告したことに、世界自然遺産登録に向けて取り組んできた県ややんばる3村、竹富町の関係者は「先人たちの取り組みが認められた」「やっとか」などと喜んだり、安堵(あんど)した。一方、「受け入れ体制など地域の議論が不十分だ」などの懸念もあった。

 国頭村辺戸区の前区長で、環境保全やガイドとしてツアーをしている平良太さん(62)は「やんばるの豊かな亜熱帯の自然などが評価され、とても喜ばしい」と声を弾ませた。「登録されると、より多くの人が来るはずだ。絶滅危惧種の樹木や希少生物を保護するためにも、行政などが発信しているルールを守ってもらうことも重要だ」と話した。

 波及効果を期待する声も上がる。東村観光推進協議会の小田晃久事務局長は「『やっと』という感じだ。国立公園に指定された当時からの先人たちの取り組みが認められた。登録予定地域の周辺でもやんばるの自然を楽しめる場所はある。来訪者を地域に案内できるよう、受け入れ体制などについて話し合っていきたい」と述べた。

 一方、増加が予想される観光客の受け入れ体制に懸念する声もあった。大宜味村でエコツーリズムを実施している「NPO法人おおぎみまるごとツーリズム協会」の宮城健隆理事長(75)は「コロナ禍で、なかなか会合が開けないこともあり、各地域での観光客の受け入れや森林保全の在り方など十分に話し合いができていない課題もある」と指摘した。

 西表島でイリオモテヤマネコの保護などに取り組む「西表島やまねこパトロール」の高山雄介事務局長(39)は「プラスの面もマイナスな面もある。西表は観光の島なので観光客が増えることは良いことかもしれないが、人が増えることで自然への影響は増す」と環境悪化を懸念していた。

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