【国頭】日本スローフード協会(齋藤めぐみ代表)が、このままでは消えてしまいかねない希少な食材を「食の世界遺産」として選定する「味の箱船」プロジェクトで、国頭村宜名真区に古くから伝わる食材「フーヌイユ」(和名・シイラ)をこのほど、登録した。5月20日、宜名真地区公民館で登録証の贈呈式が行われ、同協会生物多様性プロジェクトコーディネーター北林大さんから浦崎光男宜名真区長へ登録証が手渡された。
「伝統、環境性、社会性、生産の希少性、消滅の可能性」の5条件に適合する食材・食品が世界共通のガイドラインで選ばれる。さまざまな支援策によって、生産や消費を守り、地域における食の多様性を守ることがプロジェクトの目的となっている。
贈呈式には、浦崎宜名真区長、山入端立全前区長のほか水揚げされた魚のさばき、加工に携わる区民らが出席した。また、昨秋から「フーヌイユ」について独自に調査を進めている名護博物館や、スローフード琉球のメンバーらも出席し、区民らを激励した。
浦崎区長は「地域特産品のフーヌイユを多くの人に知ってもらい、貴重な食材として味わってもらいたい。この登録を機にさらにいい方向に広まるように地域の活性化につなげたい」と登録の喜びを話した。
フーヌイユとは、宜名真区の伝統漁法により水揚げされ、地元漁師や区民によって3枚におろし、約1時間塩漬けにしたあと、風通しの良い場所ですだれ状に2日間天日干しにするもの。古くから地域固有の食材として希少価値が高く、その独特な漁法や保存方法と共に、長年にわたり宜名真区で引き継がれてきた。10月初旬頃から始まるフーヌイユ漁は、加工・販売までを区で行う。特産品として地域活性化の一端も担っている。
北林さんは「固有の地形と季節風を生かした保存食として、沖縄の食文化の多様性を物語るフーヌイユを、守り継いでこられた宜名真区の皆さんに感謝しています。地域の豊かな食を次世代につないでいくお手伝いができたらうれしい」と話した。
同協会は、フーヌイユに関する食文化の調査や絵本づくり、絵本を活用した食育ワークショップ、全国とつながるシンポジウムなどの実施などを提案した。
(新城高仁通信員)