本紙が実施した財政調整基金に関する市町村の財政アンケートでは、新型コロナウイルスが経済だけではなく、市民生活を支える市町村財政にも影響を与えていることを浮き彫りにした。感染の収束が見えず、緊急事態宣言延長で先行きに対する不透明感が強まる中、多くの自治体は景気落ち込みによる税収減に頭を抱える。コロナ禍で、これまで以上に財源確保という難題が突き付けられると同時に、「住民サービス維持」のために、効率的な財政運営が求められる。
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昨年から続く新型コロナの流行により経済活動が抑制される一方、市町村は住民の生活支援を柱とする大幅な歳出増を余儀なくされている。行政の「貯金」と言われる財政調整基金は原則、条例などに基づき決算剰余金が生じた場合に、一定の額を回すことで増えていく仕組みだ。
2020年度は国の地方創生臨時交付金をフル活用したことで、基金の増額に成功した市町村もあったが、自主財源が先細る中、多くの事業を展開すればするほど補助金の「裏負担」も積み重なり、財政を圧迫していく。
経済活動と市町村の財政は相関関係にあるものの、景気落ち込みの影響はすぐに数字として財政に反映されるわけではなく、時間差がある。20年度末の各市町村の財政調整基金を見ると、19年度末比で減少したのは16市町村だった。感染症の影響がじかに現れるのは本年度からで、行政を預かる市町村長は今年以降、厳しい試練に直面する。多くの自治体は国の交付金のさらなる増額を求めており、地方の実情を踏まえた国の政策が急務だ。 (吉田健一)