新型コロナウイルスに対する重点医療機関である県立中部病院で計50人が感染したクラスター(感染者集団)は、発生から1カ月以上が過ぎた30日、県議会の答弁で明らかになった。16人が亡くなったにもかかわらず、公表は病院のホームページ(HP)でクラスターがあったことのみで詳細は記していなかった。その後は県も病院も追加情報を公表せず、その必要性も協議していなかった。
県内の医療関係者は、コロナ医療に対する中部病院の貢献度を認めつつも、公表が遅れたことに「積極的に公表してみんなで(感染拡大を防ぐ教訓として)学ぶべきだ」と指摘した。
クラスター発生後、中部病院側は県に感染状況の報告を続けており、県病院事業局も調査してきたという。関係者によると、コロナ対策本部でも情報が共有されており、医師らによる専門家会議でも話題に上がっていた。
マスコミ向けに日々の感染状況を説明する県の糸数公医療技監は29日、中部病院のクラスターに関する記者の質問に対し、詳細を答えなかった。30日も感染拡大の要因などについて「詳細は聞いていない」と述べるにとどめた。
昨年8月に院内クラスターが発生した沖縄赤十字病院は、HPで患者の人数や診療制限の状況を数回に分けて報告した。患者の不安解消や、救急搬送する消防や周辺の医療機関への影響を考えて発表したという。
県の対応を問題視する医療関係者は「県立病院が公表しないことがスタンダードになると、ほかの病院も公表しなくなる。県全体の医療にとってはマイナスだ」とほかの病院への影響を案じた。公表することで教訓につなげることが重要との考えを示した。
別の医療関係者は「地域の患者を多く受け入れる分、病院の負荷は大きい。高齢者や基礎疾患を抱えた方の入院も多く、感染管理を徹底しても、免疫力の低い方が亡くなる可能性が高くなる。クラスターの人数に注目するだけでなく、その背景があることを理解してほしい」と語った。
県の対応については「感染状況の全貌把握には時間がかかるが、一定程度把握できた段階で公表するべきだった」と指摘した。