米軍廃棄物「抗議のため」置いたら書類送検 沖縄県警、威力業務妨害の疑い


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄県警警備1課は3日、米軍北部訓練場ゲート前に同訓練場跡地で発見されたガラス片や鉄くず、空き瓶などを散乱させて、訓練場関係者の業務を妨害したとして、チョウ類研究者の宮城秋乃さんを威力業務妨害と道交法違反、廃棄物処理法違反の容疑で厳重処分の意見を付けて那覇地検に書類送検した。宮城さんは琉球新報の取材に「米軍廃棄物の存在を世界自然遺産登録のために隠す政府に抗議しただけだ。権力にあらがう市民を書類送検することはあってはならない」と批判した。

 書類送検容疑は今年4月7日、東村の米軍北部訓練場ゲート前にガラス片や鉄くず、空き瓶などを散乱させて、北部訓練場関係者の業務を妨害した疑い。

 県警によると、2020年から宮城さんが北部訓練場ゲート前で立ちふさがり、出入りする関係者の車の通行を妨害したほか、「廃棄物」と記した物件入りの袋をゲート前に投棄する行為が複数回、確認されていたという。袋の中には、宮城さんが訓練場跡地で発見した米軍由来の廃棄物が入っていた。県警は北部訓練場関係者から被害申告を受けていたという。県警は「(宮城さんに)犯罪に該当する行為は行わないよう繰り返し、指導・警告してきたが、違法な行為を改めなかった」と説明した。

回収されぬ弾薬類…弁護側「ごみを米軍に返す行為」

 宮城さんはゲート前での行為を認めつつも「今も残る米軍廃棄物への抗議と廃棄物の存在を知らせるためだ」とし、捜査、書類送検した県警の対応について「権力へあらがう市民への介入だ」などと批判した。

 沖縄防衛局は、2017年の北部訓練場の一部返還地引き渡し前に汚染物質の除去などの支障除去措置を実施した。引き渡し後も新たに廃棄物などが確認された場合、「土地所有者や関係機関と調整の上で回収し適切に処分をしてきている」とした。

 一方、現在も米軍由来の廃棄物が見つかる事例は後を絶たない。宮城さんは同訓練場跡地で火薬入りの弾薬などを見つけた際、警察に通報するなどしてきた。宮城さんによると、当初は回収していた県警も19年10月ごろから取り合わなくなったという。県警は「関係機関に必要な連絡を取るなど所要の措置を講じている」としているが、回収する基準の有無などは示していない。宮城さんは「回収されていない弾薬類が今も残っている。それを問題にせず、市民の行為を問題にするのはおかしい」と主張した。

 三宅俊司弁護士は「捜査権を利用した弾圧行為だ。廃棄されたごみを持ち主の米軍に返す行為は、そもそも『威力』には当たらない」と指摘した。


▼「動かせるのに威力業務妨害とは」識者は過剰反応指摘

▼世界遺産に薬莢やドラム缶「ありえない」

▼県警の対応、国会でも議論に