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元水泳部記者が「1メートルも進まない」…リーフカレント、体験してわかる怖さ


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リーフカレント体験会で、潮の流れにあらがって海岸へ向けて泳ぐ記者=7月12日、糸満市大度海岸

 本格的な海水浴シーズンを前に、リーフカレント体験会が7月、糸満市で開かれた。リーフカレントとはサンゴ礁(リーフ)の切れ目をつたって、岸から沖に向かう強い潮の流れをいう。リーフカレントが原因とみられる事故は、2016~20年度に県内で46人が確認され、そのうち30人がシュノーケリングを含めた遊泳中の事故だった。外国人2人、観光客2人の計4人が死亡した。本紙記者が体験したリーフカレントの様子を報告する。

◆気がついたら沖合近くに

 12日午前11時10分ごろ、青い空が広がる糸満市の大度海岸では、色鮮やかな熱帯魚が気持ちよさそうに泳いでいた。現場は、浅瀬のリーフと沖合の境目。浅瀬にたまった海水が、干潮時にサンゴ礁の切れ目(リーフギャップ)を伝って沖合へと流れ出ていた。リーフカレントと呼ばれる現象だ。

 中学時代は水泳部に所属し、大学時代にプールの監視員のアルバイトで日常的に泳いでいた。

 泳ぎに自信はあったが、潮の流れに逆らって必死でクロールしても、1メートルすら前に進まない。「海岸方向は無理ですね。(海岸と平行に)横に泳いでください」。リーフカレントの水路を漂いながら、そばにいた海上保安官が親切に教えてくれた。

 サンゴ礁の断層にしがみつけそうだったが、つかまり続ける自信はなかった。気が付いた時には沖合近くの潮が速い位置まで流されており、体力も残っていなかった。

 最終的にはライフジャケットの浮力を利用してあおむけになり、潮の流れに身を任せた。「これが体験会で助かった」

 記者が体験した現場は2019年8月、県内在住の夫婦がシュノーケリング中にリーフカレントに巻き込まれる事故が発生した場所だった。妻は異変に気付きすぐにリーフカレントを脱出したが、夫は沖合に流された。妻の通報を受けて、琉球水難救済会所属の水上オートバイに救助された。

 第11管区海上保安本部のホームページによると、リーフカレントの注意海域は県内に40カ所ある。ただ、同交通安全対策課は、岸に打ち寄せた波は必ず沖に環流するため、気象条件次第でどの海辺でも離岸流が発生するという。対処法は潮の流れが止まる“潮だまり”まで流された後、リーフカレントを回りこんで海辺まで戻ることだ。ライフジャケットを着用している場合は救助を待つ方法もある。同交通安全対策課の島袋光和課長は「最新の気象情報を調べて、防水パックに入れた携帯電話を持ち、常にライフジャケットを着用してほしい」と注意喚起した。
 (古川峻)


<用語>リーフカレント

 海岸から沖合に向かって潮が流れる離岸流という現象の一種。珊瑚礁に打ち寄せた高波が沖合に環流したり、干潮時に珊瑚礁の切れ目(リーフギャップ)から潮が流れ出たりすることで生まれる。離岸流は幅10~30メートル、長さ数十~数百メートルと定義され、全国各地で見られる。海岸から平行に泳ぐと逃れられる。見た目では分かりづらいため、気付かずに巻き込まれることが多い。


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