なぜ?病院クラスターの死者が増えた事情 「ベッドも動かせず」 うるま


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 うるま市の民間医療機関で発生している新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)は、県によると17日までに確認された死者数が64人となった。7月19日に最初の感染者が確認されて約1カ月となるが、収束には至っていない。支援に携わった関係者が本紙取材に応じ、病院には個室がなく、クラスター発覚後も感染者と陰性の入院患者が同じ部屋に混在していたと証言した。常勤医も少なく、マンパワー不足でベッドすら動かせない状況もあったという。

 「ここは老年精神科の病院で、内科の医者はいても感染症の専門家はいない。専門の病院に転院させてくれないかと県などに申し上げたが、どこも病床が逼迫(ひっぱく)して厳しい。苦肉の策で対応している」。16日夜、病院を運営する医療法人の会長は本紙取材に答えた。

 同病院では今年1~2月にかけても計76人の感染者が出るクラスターが発生し、今回が2度目だった。

 7月のクラスター発生時、入院患者は270人いて、医師や看護師ら職員179人が勤務していた。入院患者のうち感染が確認されたのは64%に当たる173人で、このうち64人が亡くなった。職員の感染者は26人で死者はいない。

 感染が広がった要因に、病院の構造や人手不足が挙げられる。支援に携わる関係者によると、病院には個室がなく、どの部屋もほぼ満床だった。クラスター発覚後は、本来なら分けるべき感染者と陰性の入院患者が同じ部屋に混在していたという。「常勤医も少なく、マンパワー不足でベッドすら動かせない」(同関係者)という状況があった。

 ワクチン接種は職員の85%が終えていたが、入院患者については他の医療機関から転院してきた人らを除けば、ほとんどが接種を受けていなかった。

 7月のクラスター発生後、病院には厚生労働省のDMAT(災害派遣医療チーム)や外部から派遣された医師が応援に入り、入院患者を中頭病院などへ順次転院させた。しかし、近隣病院もコロナ対応で病床が逼迫し、転院できたのは一部にとどまった。

 本紙取材に答えた会長は一連のクラスターについて、「ご迷惑をおかけして、亡くなった方にはお悔やみ申し上げる」と謝罪した。自身の責任に関しては「返す言葉はないが、全力投球でやっている。今月いっぱいである程度の収束はみられると思う」と述べた。
 (當山幸都、当間詩朗)


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