【深掘り】辺野古新護岸に着手、環境への配慮なく 防衛局が作業を急ぐ背景は


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新たにN2護岸の工事が始まった新基地建設工事現場=27日午後3時52分ごろ、名護市辺野古(小型無人機で撮影)

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けて新たな護岸工事を始めた沖縄防衛局の狙いは、護岸1本の既成事実を積み上げるだけでなく、新基地建設全体を加速させることだ。防衛局は今回着工した護岸を途中まで造成し、船を着けて資材を工事現場に運べるようにする見通し。既に別の護岸を土砂の搬入に使用しており、陸揚げ場所を増やすことで埋め立てを加速させたい考えだ。

 護岸建設の予定海域に生息していたサンゴ830群体について、防衛局は生残率の低下が懸念される夏場に移植を強行した。一方で県から許可を得られるめどが立っていない別のサンゴ類は、護岸に重なっておらずそのままで問題ないとして移植せずに石材の投入を始めた。工事加速という自らの都合を優先し、自然環境への配慮を怠っている。

 大浦湾に広がる軟弱地盤を考慮すると、政府の試算でも使用開始までに12年かかる計画だ。政府は「普天間飛行場の1日も早い返還」(岸信夫防衛相)という名目と、工事の長期化という現実の溝を埋めようと躍起になっている。

 防衛局は地盤改良工事を追加するために設計を変え、県に変更を認めるよう申請している。県は不承認とする方針を固めており、政府が強制的にその判断を覆さない限り、新基地は完成しない。仮に頓挫すれば、これまでに進めた護岸工事や埋め立ては無駄になる。そのために税金を投じ、自然環境に負担を掛けることは不合理だ。

 (明真南斗)