【記者解説】ヘイト被害防止へ法整備必要 「ニュース女子」名誉毀損訴訟


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N1地区ゲート前に座り込み、ヘリパッド建設反対の意思を共有する市民ら=2016年10月1日午前、東村高江のN1地区ゲート前

 「ニュース女子」名誉毀損訴訟で東京地裁が示した判断は、「フェイクニュース」と「ヘイト」の被害を受ける市民にとって、被害防止が期待できる画期的な内容となった。今回の事例だけでなく、沖縄の米軍基地に反対する県民の運動に対して、暴力的なイメージを印象付けさせるようなゆがめた情報はインターネット上などに氾濫する。その攻撃にさらされてきた沖縄にとっても意義のある判決といえる。

 判決内容からは、根拠が薄弱な情報で名誉を傷つけられた辛さんの被害の深刻さを考慮した形跡がみられる。原告代理人の佃克彦弁護士によると、同種の名誉毀損訴訟では、原告側の「人格権の侵害」が認められた場合でも賠償額は300万円にとどまる。さらに憲法19条の「思想・良心の自由」を侵害するおそれから、賠償は認めても謝罪広告の掲載命令に踏み込まない事例が多いという。

 通例を超える550万円という賠償額と「謝罪広告の掲載命令」という異例の判断に、裁判所の「意思」がにじむ。

 一方、今回の判決だけでフェイクニュースやヘイトの被害を根絶できるわけではない。基地の過重負担に苦しむ沖縄の実情に背を向け、攻撃するような状況はいまだ顕在する。被害者からの申し立てを待つのではなく、防ぐための法整備化など抜本的な対策も必要だ。
 (安里洋輔)


 

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