那覇の小さな古書店「言事堂」 惜しまれ閉店へ 県内で唯一、芸術専門古書扱う


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芸術関連書籍がずらりと並ぶ「言事堂」の店内と店主の宮城未来さん=8月17日、那覇市壺屋

 芸術関連書籍を専門に扱う県内唯一の古書店「言事堂(ことことどう)」(那覇市壺屋)が12日に閉店する。2007年に開店し、芸術関係者だけでなく近所の子どもたちなど幅広い人々に親しまれてきた。店主の宮城未来(みき)さん(44)は「閉店は心苦しい」としつつ「地域のつながりに支えられた」と感謝する。

 宮城さんは香川県出身。倉敷芸術科学大で陶芸を学び、沖縄県立芸術大大学院への進学を目指して00年に沖縄へ引っ越した。受験前に、県内のアートシーンの活性化に取り組むNPO「前島アートセンター」で働き始めると、「作り手を支える方が自分に合っているかもしれない」と感じた。大学院へは進学せず、同NPOや県立博物館・美術館の準備室で働いた。

 同NPOでの経験から「学生たちが手頃な価格で美術書に触れられる場をつくりたい」と、07年に若狭で言事堂を開店した。15年に松尾に移転し、20年に壺屋へ。本の販売だけでなく展覧会や朗読会なども開催してきた。

 次第に近所の子どもらも来るようになり「子どもたちの成長が楽しかった」とほほ笑む。子どもたちは自由に興味のある本を探し、朗読することも。「本の面白さを知ってもらえたら」と優しく見守っている。

 閉店の理由は主に家庭の事情だが、コロナ禍で「気持ち良く店を開けるのが難しくなった」ことも一因だという。常連客からは閉店を惜しむ声が相次ぎ、宮城さんは「これほど『寂しい』と言ってもらえるとは思わなかった。本当は続けたかった」と苦しい胸の内を語る。

 宮城さんは古書店を営む中で本の魅力にますますのめり込んだという。「古書店をやりたい若い世代が増えたらうれしい。地域の本屋さんに遊びに行ってほしい」と話した。

 閉店セール中。最終営業日は在庫の状況で前後する可能性もある。営業時間は午前11時~午後7時。水、木曜日は休み。店内は5人までに制限している。問い合わせは言事堂(電話)098(864)0315。

 (伊佐尚記)

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