沖縄県金武町の水道水から、発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)のPFOS(ピーフォス)やPFOA(ピーフォア)が、70ナノグラム検出されていたことが1日、分かった。町が同日公表した。国の暫定指針値(1リットル当たり50ナノグラム)の1・4倍となる。町は昨年7月に検出を把握していたが公表していなかった。指針値を超える水道水を町民が飲み水などとして使用していたことになる。
町上下水道課によると、2020年6月22日に人口の多い金武区と並里区の各1カ所で水道水を採取し検査した結果、金武区でPFOS・PFOAの合計値が70ナノグラム、並里区では50ナノグラムを検出した。同日の検査では両区の水源9カ所のうち、金武区の米軍キャンプ・ハンセン近くにある水源3カ所を含む4カ所からも、指針値の1・7~8・2倍の値が検出された。
上下水道課は結果が判明した7月1日、水源3カ所からの取水を停止。金武区の1カ所は指針値を超えたが、供給量確保のために取水を止めず、県企業局の水と混合することで指針値以下にして供給している。金武区の別の1カ所でも19年12月11日に172ナノグラムを検出し、同月17日に取水を停止していた。
町のPFAS調査は年4回実施しており、昨年9月以降も水道水で4~44ナノグラム、水源で6~130ナノグラムを検出した。数値は下降傾向にあるという。
昨年7月に結果を把握しながら公表しなかった理由について、上下水道課は「調査期間が終了する22年度に町民に説明する予定だった。町としてできる対応は取水停止くらいで、町民に不安が広がることや風評被害を懸念し、公表を見送った」と釈明した。
仲間一町長は「法律で定められた51項目の基準をクリアし、安全な水を供給していると報告を受けていた。PFASに関しては国が指針を定めていない段階から調査を開始し、実績を積み上げて町民に説明する考えだった」と説明した。
小泉昭夫京都大学名誉教授(環境衛生学)は「特に妊産婦の体内に蓄積して胎児に影響している可能性がある」として、住民の血液検査と低出生体重児の調査を急ぐ必要があると指摘した。
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