焼失した首里城「螺鈿玉座」尚家が復元へ 沖縄県に寄贈


この記事を書いた人 Avatar photo 桑原 晶子
玉城デニー知事(右から3人目)に首里城正殿玉座の目録を贈呈する尚厚さん(同4人目)と今回焼失した玉座製作に携わった故前田孝允さんの妻の栄さん(同5人目)=5日、沖縄県庁

 琉球国王の子孫でつくる尚家門中「水魚会(すいぎょかい)」の尚厚さん(83)=桃原農園社長=らが5日、県庁に玉城デニー知事を訪ね、首里城火災で焼失した琉球国王の椅子「螺鈿(らでん)玉座」を尚家一門で復元すると伝え、目録を贈呈した。

 2019年の火災で焼失した玉座を制作した漆芸作家の故前田孝允(こういん)さんのアトリエに再び依頼する。資金は水魚会が捻出し、制作期間は既に図面があるため前回より短い1年程度を想定。完成品は県に寄贈する。2026年度の正殿復元工事完了前までの完成が見込まれ、まずは那覇市の県立博物館・美術館などに展示を希望する。

 火災で焼失した玉座も水魚会が前田さんに制作を依頼して再現した。尚さんによると、20年1月に死去した前田さんから亡くなる1週間前に電話があり、玉座の復活に協力を求められた。「前田先生の最後の言葉を遺言と受け取り、ぜひとも果たしたい」と述べた。

 前田さんの妻の栄さん(76)も同席し「主人は火災発生直後から『いち早く玉座から復元を始めたい』と言っていた」と振り返った。

 玉城知事は「玉座は正殿の象徴的な部分で、復興に関わる人にとって大きな励ましとなる」と語った。


 

▼【動くグラフィックと写真】あの夜何が起きたのか…首里城火災を振り返る

▼火災2年、首里城祭始まる

▼首里城の謎「正殿の畳」今回も敷き方分からず、再現見送りへ

▼十月忌 見えなくても「そこにある」…大城立裕さんの首里城と普天間

▼国仲涼子さん「立ち上がる沖縄、首里城でも」

▼【首里城 私たちのリアル】復興の形は? 20代、30代、40代が語り合った