参加者の発言は市が「シナリオ」・・・本音は語れず 官房長官と普天間周辺住民の車座対話


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松野博一官房長官と米軍普天間飛行場の周辺住民との車座対話=6日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター

 5、6日に来県した松野博一官房長官は、米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市内の自治会長らと面談した。「聞く力」を掲げる岸田文雄首相が全閣僚に指示した、国民の声に耳を傾ける「車座対話」の一環だが、実際には市がまとめた項目を各参加者に振り分けて発言する“予定調和”だった。参加者から「シナリオ通り」との声も聞かれた。

 岸田首相は10月の所信表明演説で「国民の声を真摯(しんし)に受け止め、形にする。信頼と共感を得られる政治が必要だ。そのために、国民の皆さんとの丁寧な対話を大切にしていく」と述べた。全閣僚に車座対話を積み重ねて行政を点検するよう指示している。

 宜野湾市での車座対話も政府側からの要望だった。松川市長は終了後、「就任後の初来県で『すぐ車座対話をしたい』とのことで、負担軽減にしっかり取り組みたいという思いを感じた」と評価した。

 松野官房長官は、普天間飛行場の「周辺住民との車座対話」と位置付け、市内23自治会のうち6自治会の会長が参加した。参加者は自治会長会三役を除くと、防衛省の補助で公民館を建て替えた自治会や今後予定している自治会だった。

 報道陣に公開された冒頭部分で、自治会長たちは半円状に間隔を保って設けられた席に着き、1、2分ずつ、用意された紙に目を落としながら話した。

 航空機の夜間飛行や騒音、有機フッ素化合物(PFAS)汚染など基地被害の訴えと、公民館建て替えや道路整備などへの謝辞が半分ずつ盛り込まれた。名護市辺野古への飛行場移設に伴う新基地建設についての議論はなかった。

 自治会長らが持っていた紙には、事前に市がまとめた文言が印字されていた。伝える内容が重ならないよう調整済みだった。市の担当者は「自治会長たちに集まってもらい、意見を吸い上げた上でまとめた。現場で自分の言葉で話している様子も見受けられた」と説明した。

 一方で、参加者の一人は「決まった通りに話すだけだった。もっと基地被害についても言いたいこともある」と振り返った。辺野古移設について「反対だが、自治会長の立場では、さまざまな意見を持つ住民に配慮しないといけず、あの場では言えない」と本音を漏らした。
 (明真南斗、塚崎昇平)

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