宇土部隊が学校を徴用 高山朝光さん 山の戦争(39)<読者と刻む沖縄戦>


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現在の伊豆味集落。伊豆味国民学校に宇土部隊の本部が置かれた

 1944年夏、高山朝光さん(86)=那覇市=が暮らしていた本部町伊豆味に「宇土部隊」が配備されます。正式の部隊名は独立混成第44旅団第2歩兵隊(国頭支隊)で、隊長は宇土武彦大佐です。秘密戦の任務を帯び、後に敗残兵の群となって住民に危害をもたらします。

 部隊本部を伊豆味国民学校(現伊豆味小中学校)に置きました。「宇土部隊が学校に駐屯したので、私たちは地域に分散して授業を受けました」と高山さんは語ります。

 集落内の民家にも兵士が住むようになりました。宿舎として徴用したのです。「私の祖父母の家に15人ほどの兵士がいました。私の家でも1人の将校が数日過ごしました」

 高山さんは宇土隊長を見たことがあります。「軍刀を下げ、馬に乗っている姿を一度だけ見ました。軍人をあがめ奉る時代です。軍国教育を受けている子どもたちは兵士の勇姿にあこがれました」

 日本軍の残酷な行為にも接しました。朝鮮半島から「軍夫」として連れてこられた朝鮮人に対する激しい暴力です。

 「日本兵の宿舎造りをしていた朝鮮人が私の家の前で休憩していました。そのうちの1人が庭に実っている真っ赤なコーレーグースを取って食べました。それが日本兵の指揮官に見つかり、死んでしまうかと思うくらい殴られていました」

 日本軍の駐屯によって伊豆味の雰囲気は変わっていきます。