【本部】防衛省統合幕僚監部は26日、自衛隊統合演習(実動演習)のために大型車両を沖縄県本部町の八重岳に搬入させたが、町道沿いの桜の木の一部を折ってしまい、頂上付近から引き返した。市民約20人が抗議し、ある市民は「戦没者の魂が桜の木に移り、自衛隊の演習を阻んだとしか思えない」と驚いた様子で語った。防衛省は同日夜、29日まで予定していた訓練の中止を同町に報告した。
午前11時ごろに自衛隊の車両が八重岳の頂上付近に到着し、市民らの阻止行動などで3時間ほど待機した。大型車両は3台、うち2台はアンテナとみられる機材を積んでいた。午後2時ごろには県警機動隊が駆け付け、座り込む市民らを強制排除した。頂上の演習場に向けて進む中、高さ約3メートルほどの桜の木の枝に阻まれた。隊員が車両の上から慎重に枝を避けながら進もうとしたが、走行困難と判断し引き返した。
過去にも八重岳で通常の訓練を実施したことはあるが、大型車両の走行はなかった。防衛省が本部町に提出した申請書によると、使用目的は「陸上自衛隊演習および陸自システム通信訓練のため」としている。本部町は電子戦との関連性を防衛省に問い合わせたが、年3回程度実施している「通常の通信訓練で、電子戦ではない」と否定した。
同町は訓練の実施内容が「申請内容と異なれば許可を無効にする」との姿勢を取り、桜の木が折れたことに対しては「正式な報告をもって対応したい」とした。
八重岳は沖縄戦当時、日本軍が陣地を置き、激戦地となった場所。座り込んだ市民の一人、うるま市の照屋勝則さん(66)は「非暴力の抵抗は排除されたが、本部町の誇る桜が訓練を中止させた。石垣島や宮古島など自衛隊の訓練が強行されている地域を勇気づけるはずだ」と話した。