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製造現場は男性の職場? エンジニアに女性採用しイメージ刷新<企業の「女性力」>3


この記事を書いた人 アバター画像 琉球新報社
製鉄工場で先輩の比嘉章雄さん(左)と打ち合わせする拓南グループとして初めて採用された女性エンジニアの仲里典子さん=沖縄市の拓南製鉄

 天井のクレーンが鉄筋をつり上げる広大な拓南製鉄(沖縄市)の製品倉庫。機械化が進む作業現場では、ほとんど人影が見えないが、倉庫内の機械加工室で女性技術者の姿があった。まもなく創業70周年を迎える県内製造大手の拓南グループ(那覇市、古波津昇会長)が2019年に大学卒の女性エンジニアとして初めて採用した仲里典子さん(25)だ。

 社員の9割以上が男性を占める同グループは近年、女性新卒者の採用に力を入れている。20年に拓南商事もエンジニアで初の女性社員を迎えた。性別による「役割分担」の壁を打ち破ろうと、女性技術者の積極的な受け入れに転換した。製造現場の「男性職場」のイメージを刷新し、今後の企業発展にもつながると期待される。

 ■トイレなく不便も

 「小学校のごろ、図工の時間がとても楽しかった。絵を描くのが好きで、ものを作る仕事に就きたいと思った」。拓南製鉄で機械設計や部品の見積もり業務に携わる仲里さんは、ものづくりの道を志した理由を振り返った。

 兄弟に囲まれて育った仲里さんは、男性の多い職場で働くことに違和感はない。ただ、工場内に女性専用の設備がなく、不便を感じることがある。「工場の一番奥に女性トイレがないので、トイレを使うには近くの工場に移動する必要がある」という。仲里さんらの活躍によって、「環境改善に関して会社の上層部から相談がきた」と、社内では徐々に変化が生じている。

 ■性別ではなく中身

 女性社員の増加を受けて、環境改善だけではなく、採用のガイドラインも見直した。グループを統括する拓南本社人事部の翁長辰伍部長は「数年前まで女性の給与ガイドラインが明確にされていなかったが、現在は男女関係なく、最終学歴での基本給の判断に切り替えた」と説明した。

 さらに、各部署に女性社員を配置する動きもある。資料の作成や調整事項などを男性社員と分担することで、業務の効率化などを図る。

 古波津会長は「合理的に書類をまとめたり、生産管理を進めたりする側面もある」と仲里さんらの働きぶりを評価する。その上で「そもそも性別と関係なく、仕事の中身で従業員を評価することが大事だ。今後も能力によって優秀な人材を採用し、いずれ女性社員が男性より多くなってもいい」と、女性社員の増加に意欲を示した。
 (呉俐君)


 近年、「女性活躍」という言葉を耳にする。企業に勤める女性の人数は増えているが、出産や育児を機に約半数が退職している実態がある。果たして女性が求めている「活躍」は実現できているのか。働く女性が置かれている現状や課題などを紹介する。


 

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