沖縄のコロナ病床使用率は緊急事態レベル…宣言適用に慎重なのはなぜ?


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 全国に先駆けてオミクロン株への置き換えが進んだ沖縄の感染動向と、国がまとめた新型コロナの感染状況の判断指標や緊急事態宣言の目安にギャップが生じている。病床使用率や3週間後に必要となる病床数は、15日までに宣言の目安を超過した。感染初期段階で医療従事者の欠勤が増えて病床確保が難しくなっている一方、重症治療を受ける人はゼロが続く。比較的「軽症者が多い」(県担当者)というオミクロン株の特徴が指標には反映されていないことが宣言など対策強化の判断を難しくしている。

 県は宣言の適用にも慎重姿勢だ。早いペースで変異を重ねる新型コロナに備える難しさが改めて浮き彫りとなっている。

 県は感染状況を判断するため(1)新規陽性者数(2)病床使用率(3)重症者用病床使用率―の3項目を指標としている。国の新型コロナ対策分科会が昨年11月に示した「新たなレベル分類の考え方」を踏まえて策定した。

 国は特に病床使用率と重症者用病床使用率が50%を上回ったり、3週間後の病床予測が確保病床数を超過したりすると宣言が視野に入るとした。

 指標のうち県内のコロナ用病床使用率は15日時点で53・2%となり、宣言の目安を超えた。

 県内では感染力の強いオミクロン株の影響で医療従事者の欠勤が増え、病床確保が思うように進んでいない。病床使用率は、事前の調査で一般医療に影響を与えない範囲で確保できるとした最大病床数(沖縄の場合は635床)を母数に算出するが、同日時点で実際に確保できているのは475床にとどまる。

 これを母数にすると使用率は71%に達する。県の糸数公医療技監は「入院調整が難しくなっている」と話す。

 重症病床使用率は40・3%だが、実際にECMO(エクモ=体外式膜型人工肺)などを要する重症者はいない。

 国が示した予測ツールによると、15日から3週間後に必要となる病床数は1万763床に上った。10日時点の約83万床の予測からは下がったが、宣言の目安となる635床を大幅に超過している。「病床逼迫(ひっぱく)を防ぐ」とした予測ツールの目的は依然として満たせていない。

 厚生労働省によると、このツールは現時点で昨年流行したデルタ株を想定して重症化率などの計算式を設定している。同省は「科学的知見が集まれば改定する」とした。

 糸数氏は病床数予測について「医療従事者の欠勤など、想定されていないことがある」と話した。

(知念征尚)


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