旅行業のJTB沖縄(那覇市)は、管理職9人のうち4人が女性で、女性管理職は4割に上る。制度の柔軟な改革により出産や育児を機に退職する人がほぼいなくなり、男女の勤続年数の差も1年未満と小さい。ライフイベントとキャリア継続を両立できることで、優秀な女性社員の経験や知識を手放さずに済み、会社にとってのプラスも大きい。
「普通に仕事したい」
沖縄仕入商品企画部の照屋昭子地域統括担当課長(49)は1998年に入社し、35歳の時、出産と育児で1年間の休業を取得した。沖縄旅行の商品企画でリーダーを担うなど、仕事が波に乗っていた時期で「また一からキャリアを積まないといけないのか」という不安もあった。
復職後、同じ部署に配属されたがリーダー職を外れた。同期の男性社員がキャリアアップする姿を見て悔しい気持ちもあった。業務量は軽減されたが「普通に仕事がしたくて、気を遣われるのが嫌だった。上司に仕事をくださいと言った」と振り返る。
義父母の協力を得て育児をしながらフルタイムで働き、4年前から管理職に就いた。「自分は家族の協力なしでは働けなかった。今は、働き方の選択肢が広がって(男女の)差がなくなってきている。経験を踏まえ、後輩たちが働きやすい環境にしたい」と意気込む。
細やかな制度改善
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、働く女性の約5割が出産や育児で退職している。最も多い理由は「仕事を続けたかったが育児との両立が難しい」で、意欲があるにも関わらずキャリアの断絶が生じている。
JTB沖縄では柔軟に制度を改善してきた。2年前から、産休・育休や復職の前に面談を実施し、本人のキャリアに対する考え方を聞き、不安軽減に取り組んでいる。
育児などで時間に制約があってもフルタイムで働けるよう、早く出社して早く退勤できる制度や、1時間単位で取得できる有給休暇、保育園の送迎がある従業員には車通勤を認めるなど、ニーズに応じた細かな改善が女性従業員の定着率やキャリアアップにつながっている。昨年、旅行業界初の「えるぼし」3つ星認定企業となった。
優秀な人材の流出防止にもつながり、会社にとってもメリットとなっている。総務・人事担当マネージャーの宮城拓司氏は「男女比を半々にするという考え方ではなく、(男女問わず)スキルや経験を持つ人にちゃんと仕事をしてもらう。そのためにも人材が輝ける環境作りを常に考えていきたい」と話した。
(中村優希、写真も)
女性が結婚や出産などを機に、仕事の継続やキャリアアップを諦めざるを得ない状況が続いており、連載では女性が直面する課題を取り上げます。連載へのご意見やご感想、体験談などのメールは、QRコードを読み取るか、ファクス098(867)5607まで。