福祉施設「介護が崩壊」 職員感染で約40人中18人欠勤 医療支援も追い付かず


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ロビーで入所者の情報を確認するスタッフら=27日、本島南部(画像を一部加工しています)

 県内で福祉施設のコロナ感染拡大が続いている。県によると施設内療養者数は高齢者、障がい者施設を合わせて29日時点で93施設278人。高齢者施設では21人が酸素投与を受ける「中等症」の患者だ。看護師の平安諒也さんら外部から支援に入る介護・医療従事者の役割が重要性を増すが、専門家は「医療サポートが追い付かない早さで入院待機事案が増加している」と危機感を募らせる。

 南部の高齢者施設では平安さんら外部の医療従事者の介入で、施設内を感染可能性がある場所とない場所を分けるゾーニングや防護服、手袋の着脱方法を徹底した。

 感染者がいる部屋は誰が見ても分かるように、ドアの前に赤いテープを張り注意を促している。

 食事も食堂ではなく各部屋で取ることになる。食事介助のスタッフが居室を行き来する必要が生じ、食事時間は約3時間と通常時の倍に伸びた。

 看護師や介護士らが感染者の部屋から未感染者の部屋へ移動する際は、防護服や手袋を変えるなど、手間が掛かる。

 感染防止対策が増える一方、職員の感染も相次ぎ、人手不足は深刻だ。同施設では職員約40人中、27日時点で18人が欠勤した。医療面でのサポートは受けるが、介護士の応援は来ておらず、施設の担当者は「介護職員の負担が重くなっている」と話した。

 高齢者施設は職員と入所者が接触する場面が多く、感染拡大のリスクがつきまとう。

 入所者と介護士、医療従事者の接触を減らし、2日に1回行っていた入浴を取りやめ1週間に1度体を拭くことに変えた。

 おむつも長時間使用タイプに変え、交換回数を1日8回から4回に減らした。平安さんは「クラスターがひとたび起きれば、感染収束が第1の目的になる。本当はいろいろなことをやってあげたいのだが」とため息をついた。

 県の対策本部でクラスター施設の支援に当たる仲村尚司医師は、介護が必要な高齢者はホテル療養などが使えず「施設内療養か入院の2択しかない」とし、重症化のリスクもあるため支援を厚くする必要性を訴えた。

 現場では、平常時から不足していた介護士がコロナの影響で「欠乏状態で、介護崩壊が起きている」と警鐘を鳴らした。看護師、医師も不足していると指摘。自宅など医療機関外で療養する人が急増する中「施設と医療機関の双方のリソースを守るためにも、より多くの医者がコロナ診療に関わっていくことが必要だ」と強調した。
 (知念征尚)

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