ハンガーで点滴スタンド…急ごしらえの「病室」 中等症でも施設で療養 集団感染続発の福祉現場


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看護師の平安諒也さん(左)サポートのもと、酸素吸入を続ける夫(右)と面会する女性=27日、沖縄本島南部

 「お父さん、目を開けてごらんよ」。94歳の女性は、同じ高齢者施設で暮らす酸素吸入器をつけた96歳の夫に語り掛け、そっと頬をなでた。県内の福祉施設で新型コロナのクラスターが続発し、深刻な状況が続く。本来は病院への入院が望ましい人でも施設で療養を続ける例が相次ぎ、支援に入る医療・介護従事者が不足する。クラスター収束に向け闘う本島南部の高齢者施設を取材した。

 同施設は15日に職員1人の感染が見つかって以降、感染が急拡大した。27日までに入所者や施設利用者約50人のうち、26人が感染した。27日時点で21人の感染者が施設内で療養を続けている。

 「中等症」に当たる酸素投与を受ける人が4人いる。夜間から未明にかけて体調を崩す感染者もいる。本来は入院が求められる状態だが、医療機関も欠勤が多く入院調整が難しくなっている。施設内で重症化するぎりぎりまで診る取り組みが続く。点滴バッグを掛けるスタンドは衣服用ハンガーで代用している。施設が急ごしらえした「病室」だ。

 前出の96歳の男性は、19日に感染が確認された。寝たきりが続いて食事が難しくなり、栄養や水分を点滴で受けていた。肺炎の症状が厳しくなったことから、27日に病院に移った。同施設の支援に入る看護師の平安諒也さん(32)は、重症化リスクのある高齢者は「本来は入院が望ましい」と話す。

 施設内の感染事例が相次ぎ、人繰りが追いつかない施設も出ているとみられる。平安さんは「応援に入る医療、介護従事者が増えれば、施設内クラスターはもっと早期に収束させられるかもしれない」と話し、外部の支援を増やす必要性を訴えた。 (知念征尚)

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