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通訳ガイドの伝わる英語 沖縄通訳案内士会会長・マーシュゆかり<仕事の余白>


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マーシュゆかり氏

 英語のプロは縦のものを横にしただけの英文が伝わらないと知っている。「本」のような一般名詞であればbookの一語で問題ないが、「豆腐よう」など、辞書に載っていない言葉をどう伝えるかは工夫次第だ。

 原材料、製造方法、類似した食感や味の食べ物を例に挙げての説明はその一つ。「風味は濃厚チーズ、食感はクリームチーズのようで、原料の豆腐、泡盛、紅麹(これらもまた解説が必要)を発酵した食べ物です」という具合だ。さらに、初見の食べ物を口にしてもらえるよう、耳心地の良い訳語選択も通訳ガイドの現場では欠かせない。

 物質名詞の訳し方でこれだから、歴史文化の紹介で通訳ガイドが準備に費やす時間を想像いただけると思う。聞き手を飽きさせないコンパクトな内容の目安は、1テーマ3分でのガイディングだ。つまり、自国の特徴をどれだけ咀嚼(そしゃく)してアウトプットできるかの応用力とゲストの関心に合わせて話題を膨らませてゆく英語力。腕の見せ所だ。

 観光現場で働く方から、何から始めたらいいかと質問を受けることがある。まずは形容詞をたくさん覚えることをお勧めしている。食事のシーンなら「美味しい」をdelicious, mouth-wateringという具合に、ニュアンスの違いも含めて理解するといい。

 伝わる英語とは、易しい単語の選択と短い英文での説明につきる。現場対応の英語は、著書「OKINAWA WALK」にも例文を多数挙げているので参考にしてほしい。