泡盛3回蒸留すると…甘い香り濃縮、成分濃度変化 新たな酒質に 沖縄国税事務所が解明


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
3回蒸留製法の特長を報告する、沖縄国税事務所間税課の相澤常滋主任鑑定官(右)と原爽太朗財務技官=10日、那覇市泉崎の琉球新報社

 沖縄国税事務所は10日、2019年に県内酒造所12社が共同で商品化した次世代泡盛「尚(しょう)」に採用されている、「3回蒸留製法」の特長を解明したと発表した。カクテルに使用した際に他の素材と調和しやすい酒質の秘密を調べたところ、蒸留を繰り返すことで従来の泡盛に含まれる成分の濃度割合が変化し、新たな酒質となっていることが分かった。

 「尚」は通常1回の蒸留を3度行っており、甘い風味と後味のきれの良さがある。沖縄国税事務所は独立行政法人の酒類総合研究所(広島県)と共同研究し、製法と酒質の関係について科学的見地からアプローチした。

 研究では、1回蒸留の一般的な泡盛を再蒸留することで含有成分がどのように変化するのかを調べた。「尚」の成分分析も併せて実施している。

 蒸留の時間で各成分の濃度の留出について五つのパターンがあり、蒸留を繰り返すことで濃縮される成分と減少する成分があることが判明した。3回の蒸留で、果物のような甘い香りの成分「エステル類」は濃縮され、辛味や苦味のある成分は減少し、後味の余韻を残す成分はほぼ除去されている。

 同事務所間税課の相澤常滋主任鑑定官は「3回蒸留製法の謎を解明することで、より多様性のある泡盛を造ることができる」と説明した。成果は日本醸造協会誌2月号に掲載されている。
(小波津智也、写真も)