米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、斉藤鉄夫国交相は28日、県に対して、沖縄防衛局が出した軟弱地盤改良を伴う設計変更を承認するよう、「是正の指示」に踏み切った。国の是正勧告に対し、県が20日に「精査する」として判断を見送ってから、わずか8日後に法的拘束力のある指示を出した格好となった。あくまでも県側が求めた「対話」には応じないという国側の強硬姿勢を改めて示した形だ。
くしくも是正指示を出した28日は1952年のサンフランシスコ講和条約で、沖縄が日本の施政権から切り離された節目で、県民にとっては「屈辱の日」。国交相が指示を出す直前には、衆院本会議で基地負担軽減を政府の「責務」とした沖縄の日本復帰50年に関する決議が可決し、岸田文雄首相も衆院本会議で、基地負担の解決に向けて「沖縄の心に寄り添う」と宣言した。だが、県関係者らは首相の発言を、整合性のない空虚な言葉として受け取った。
■判断の背景
「4・28」に、是正の指示を出したことに対して、県幹部は「県民に対する気遣いが全くない。憤怒に堪えない」と強い言葉で政府を非難した。28日には国頭村と鹿児島県与論町が、沖縄の復帰を願った「海上集会」を10年ぶりに再現。同日夕には辺戸岬で復帰を記念した式典も開かれた。この幹部は「4月28日まで踏みにじるのか。昔の政治家ならやらなかったはずだが、劣化している」と指摘した。
関係者によると、政府内には、県が20日に是正勧告への判断を見送った段階で早期に是正の指示を出すことも検討していたが、沖縄市長選など「政治日程を考慮した」という。24日投開票の沖縄市長選で自公推薦候補がオール沖縄勢力に圧勝したこともあり、5月15日の復帰記念日を避けて期限を設定した上で、指示に踏み切った。
政府は、県との共催で「5・15」の記念式典を東京と沖縄で同時開催する。式典には、天皇皇后両陛下がオンラインで参加するほか、岸田文雄首相ら国内外の要人が多数集まる。政府内には「5・15の直前に県側からの反発が予想される決定をして、祝賀ムードに水を差したくない」(関係者)との狙いもあった。
■知事選見据え
5月1日には、自民党の茂木敏充幹事長が来沖し、県連は候補者選考委員会を立ち上げて9月に迫った県知事選の候補者選定作業を本格化させる。政府関係者は「辺野古移設の問題は知事選で決するしかない。司法に訴える手段も最高裁で県側の訴えは退けられており、手詰まりの状態だ」と県政交代に自信を見せる。
一方、県政与党会派は30日にオンラインで「県民大会」を開き、改めて新基地建設反対への全県民的な機運を高めたい考えだ。「5・15」を前に知事選を見据えた自公と、オール沖縄の動きが活発化する中、辺野古新基地建設問題は新たな局面を迎えた。
(池田哲平、安里洋輔)