新型コロナウイルスに感染した妊婦が4月は345人と月別で過去最多になったことが29日、琉球大病院の周産母子センター部長、銘苅桂子教授への取材で分かった。周産期医療の現場では、症状が落ち着いた患者を回復期病院に転院してもらうことで病床確保につなげているが、流行第7波ではこれまで以上に綱渡りの状態だ。銘苅教授は「これ以上感染が拡大すると、コロナ以外の妊婦の診療にも影響が出る可能性がある」と警鐘を鳴らす。
新型コロナに感染した妊婦に分べんや新生児集中治療室(NICU)が必要な場合、本島では琉大病院や中部病院、北部病院で対応してきた。
南部医療センター・こども医療センターでは、新型コロナ以外のハイリスク妊婦に対応してきたが、病床がひっ迫しているため、比較的症状が落ち着いた患者は回復期病院へ転院してもらうことで病床を確保している。
双子の胎児のどちらかが発育不全になる「一絨毛膜二羊膜双胎(いちじゅうもうまくにようまくそうじ)」のため、同センターに1カ月近く管理入院していた女性(38)は、予定日の約2週間前に別の病院に転院となり、帝王切開で出産した。面会制限が続いた上に新しい環境での出産に戸惑った。「医療のひっ迫を考えると納得するけれど、急な転院にかなり驚いた。私以外にも数人が転院したようだった」と振り返った。
オミクロン株の拡大以降、感染時の症状が軽くなったと言われるが、自宅療養中の妊婦に対する健康観察は重要となる。入院対応以外の医療機関も協力しているが、銘苅教授によると、医療現場も感染などで欠勤者が増えているという。「産科は通常でも1人が1・2人分ぐらい働いてきたが、新型コロナ対応で業務量は倍増している」と説明する。
こうした医療者の奮闘は妊婦の支えになっている。妊娠29週で感染した女性(35)は、自身や胎児の健康状態が気がかりだったが、県や医療機関によるきめ細やかな健康観察で不安が解消されたという。「万が一の場合の受診や薬の処方についても案内があった。発熱中はおなかの張りがあったものの、医療者の手厚い対応で本当に安心できた」と、感謝の思いを語った。
(嘉陽拓也)
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