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那覇支店開設50周年 日本銀行那覇支店長・飯島浩太<仕事の余白>


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飯島 浩太(日本銀行那覇支店長)

 この原稿の掲載日は2022年5月15日、沖縄の日本復帰50周年の記念すべき日に当たる。実は、日本銀行那覇支店も、沖縄の本土復帰の日に開設したため、本日は那覇支店開設50周年の記念日でもある。

 日本銀行では1971年4月に準備室を立ち上げ、翌年5月15日の那覇支店開設に向け本格的に動き出した。開設時の一番の大仕事は何といっても「通貨交換」であった。復帰前、沖縄はアメリカの統治下にあり、当時の法定通貨はドル。復帰に伴い通貨をドルから円に換える必要があった。タイミングの悪いことに71年のニクソン・ショックによりドルが減価し、沖縄住民を始め関係者は翻弄(ほんろう)された。日本銀行那覇支店にとって、日本円の現金を本土から輸送し、ドルとの「通貨交換」をスムーズに実現することが最大の任務であった。

 必要な日本円は540億円と試算された。540億円の現金は自衛艦で輸送され、72年5月2日に沖縄に到着。実際のドルと円の交換は5月15日から県内の金融機関等に設けられた190の交換所で実施され、5月20日に完了した。

 以来50年、日本銀行那覇支店は、沖縄県の皆さまとともに歩んできた。現在でも通貨を円滑に流通させることは、県内の金融経済情勢のモニタリング、金融機関や政府の銀行としての役割と並んで、当店の重要な仕事の一つである。初代支店長は「100%沖縄を向いて仕事をせよ」が口癖だったと聞く。その心意気をしっかり受け継ぎ、今後も当地のために尽力したい。