皆様方、はいさい、ぐすーよ、ちゅーうがなびら。3月23日に沖縄に着任し、はや2カ月がたった。コロナの猛威が収まらない最中、私のように、感染者の報道が気になる人は少なくないと思う。NHKの統計によると、沖縄県の直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者数は5月19日の時点で1012・45人に達し、全国ワーストだが、台湾も同日の感染者数が9万人余りになり、過去最多を更新した。これから「ウィズコロナ」に向け、いかにその感染者数を抑えるかが台湾と日本、沖縄にとって、重要な課題になる。
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台湾は過去253日連続で、域内感染者数がゼロの世界記録を保持している。その理由として、先日わが厚労省相当の衛生福利部部長・陳時中はデジタルをうまく利用したことが感染者数抑制につながったと説明した。これから、私が紹介する台湾の政策について参考にしていただければ幸いだ。
その政策を説明する前に、台湾の高齢者はワクチンの副作用を恐れ、接種率は低かった。そのため、台湾政府は衛生福利部より、65歳以上の接種者に一律500元(約2千円)の商品券を配布した。さらには各地方自治体、例えば、中南部にある嘉義市ではさらに500元の商品券も追加した。この政策により、今月19日の時点で、8割を超える台湾人が1回目と2回目の接種を終え、3回目の追加接種済者も63%に達している。
それとは対照的に、沖縄の3回目接種者は約3割だけである。このように台湾の感染者数9万人のうち、99・79%は軽症者だったことから分かるように、ワクチン推奨政策がある程度功を奏したといえる。
また、近隣同士の助け合いも必要となってくる。例えば、コロナが猛威を振るっている最中でも、台日間では「持ちつ持たれつ」の精神が見られた。2020年にまず、日本でマスクが不足した際に、台湾からマスク200万枚を寄贈した。その後、台湾がワクチン不足問題に直面すると、21年には日本から計6回、累計約420万回分のアストラゼネカ製のワクチンを供与いただき、台湾にとってまさに「恵みの雨」だった。その恩返しとして、台湾から21年9月に酸素濃縮器1008台とパルスオキシメーター1万台を寄贈した。
デヴィッド・リカード(David Ricardo)が提唱した比較優位(comparative advantage)という概念のように、自身の最も優位な分野に特化して生産、貿易を行えば、互いにより高品質の製品と高い利益を獲得できるということは正しいが、防疫物資のように命に関わる大きな問題となると、一刻の猶予も許されず、自国で生産するか、他国からの支援を求める必要がある。
例えば、台湾も日本もほとんどのマスクが中国産で、中国で感染が拡大されると、マスクを供給できず、台湾も日本も困っていた。そこで、台湾は「口罩国家隊」(マスクナショナルチーム)を結成し、マスク製造に尽力することで、日本をはじめ、他国に提供することができた。コロナなどの伝染病は国境を越えた問題であるため、他国と相互に防疫物資を交換することが、感染の封じ込めに寄与すると確信している。
最後に、国際組織への参加と、国際感染症の情報共有が必要だ。安倍晋三元首相、菅義偉前首相、岸田文雄総理も台湾の世界保健機関年次総会への参加を支持すると表明した。21年6月日本参議院は「世界保健機関の台湾への対応に関する決議」を初めて全会一致で可決した。その背景に沖縄県議会、糸満市議会をはじめ、39の都道府県議会も日本政府に意見書を提出したことがある。この場を借りて、心よりお礼を申し上げる。
台湾は09年から16年の8年間、世界保健機関年次総会(WHA)にオブザーバーとして参加していたが、17年以降6年連続で中国の妨害により、出席できていない。今年、日本側から多大な声援をいただいたが、台湾は依然として、今月20日に開催された第75回世界保健機関年次総会に招待されず、誠に遺憾である。台湾は日本、特に沖縄に近いので、世界保健機関から疫病関連情報が得られなければ、うまくその感染症を対処できず、日本をはじめ、近隣諸国にも影響を及ばすと考える。03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の時もそうだった。今後、台湾は日本をはじめ、世界各国と共にWHOが掲げる空白なき防疫のビジョンを実現していきたい。
結びに、コロナ感染拡大をうまく封じ込めるには、デジタルの運用、ワクチン接種の推奨、国際組織への参加および世界各国の連携がどうしても必要であり、今後とも日本、沖縄県と防疫経験を共有し、一緒に手を携えて頑張っていければと思う。ちばりよー。
<台湾のコロナ対策>