亡き友の声を刻む 元全学徒の会が活動を本に 21校の戦没者の名簿も 戦争美化の教育に警鐘鳴らす


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冊子に込めた沖縄戦の継承と平和への思いを語る「元全学徒の会」幹事の宮城政三郎さん(左)と瀬名波栄喜さん(右)=7日、那覇市の養秀同窓会館

 沖縄戦に動員された県内21の旧制師範学校・中等学校の元学徒らでつくる「元全学徒の会」が、同会の活動をまとめた「学園から戦場へ―亡き数の学徒の言霊(ことだま)とこしえに―」を発行した。同会が調査した21校1984人の戦没者名簿を掲載した。

 元全学徒の会共同代表の瀬名波栄喜さん(93)と幹事の宮城政三郎さん(93)が7日、那覇市内で記者会見し「沖縄を二度と戦場にしてはいけない。戦争のない平和な世の中であってほしい」と語り、若い世代に手に取ってほしいと呼び掛けた。

 冊子には、会の発足前も含め約9年間の活動記録がつづられている。この間、同会は各同窓会を通じ、沖縄戦における学徒の戦没者数を調べ、1984人と確定した。

冊子「学園から戦場へ」

 当初、県が困難視していた21校の戦没者数を記した刻銘板設置も実現した。

 瀬名波さんは「亡き友の声なき声に耳を傾け、二度と戦争をしてはならないという思いで活動してきた」と振り返った。宮城さんは「冊子を編集して思ったのは、私たちは戦争で死ぬために生まれてきた訳ではないということ。平和であってこそ命が永らえられる。命が一番大事だ」と語った。

 ロシアのウクライナ侵攻や沖縄周辺で緊張が高まる状況に、瀬名波さんは「悲惨な沖縄戦の記憶が継承されなくなると、再び沖縄が戦場になる過ちを起こしてしまう」と懸念を示した。宮城さんは「日本は近隣の国々と仲良くしなければならない。日本は不戦の憲法9条をかざし、平和外交をしてほしい」と望んだ。

 冊子は1千部印刷し、県内の各高校と図書館に寄贈するという。
 (中村万里子)