6月の「ハンセン病に関する正しい知識を普及する月間」に合わせ、県はこのほど、新しい啓発リーフレットを作成した。沖縄戦当時のハンセン病療養所の状況を新たに加えるなど、沖縄における歴史の記述を従来より増やした。「県においても、国の施策に関わってきた時代があったことを深く反省」すると行政の関わりをわびた玉城デニー知事のコメントを盛り込んだのも特徴だ。
沖縄戦当時の状況を説明した項目では、宮古南静園、沖縄愛楽園ともに激しい空襲や艦砲射撃を受け、職員が職場を放棄して園を逃げだしたことを説明した。
残された入所者たちは日本軍に追われて自然壕(ごう)や雑木林、自分たちで掘った横穴の防空壕で身を寄せ合った。だが「極度の栄養失調になり、感覚を失った手足の傷を悪化」させた。マラリアや赤痢なども流行し、約400人が亡くなるなど、過酷な環境を解説した。
玉城知事は10日の会見で「われわれが人権を侵害し、差別を主導するような立場には二度とならないという深い反省を込めた。問題の啓発や、回復者や家族が安心して過ごせる社会づくりに努める」と強調した。
リーフレットは当事者らの意見を踏まえて作成した。1万9500部を作成し、教育機関や図書館などに配布し、人権学習に活用する。
一方、県が回復者との間で、問題啓発や福祉増進について話し合う協議会を年内に立ち上げる方向で調整していることについては「状況が整えば、前倒しで協議会を行う準備も進めたい」と述べ、立ち上げ時期を早めたい意向も示した。
(知念征尚)