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沖縄県の失業率 日本銀行那覇支店長・飯島浩太<仕事の余白>


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飯島 浩太(日本銀行那覇支店長)

 沖縄県の失業率は、本土復帰以降40年近く、全国の失業率より2~5%程度高いという状況が続いた。しかしながら、この10年でそうした状況は大きく変化した。沖縄県と全国との失業率の差は2010年頃から縮小を始め、2019年にはその差はほとんどなくなった。2010年は全国が5・1%に対して沖縄県は7・6%であったが、2019年は全国2・4%に対し沖縄県は2・7%となった。この背景には、観光需要の著しい増加により、沖縄県の景気の拡大が続いたことがある。観光需要の増加は、宿泊業だけでなく、飲食や小売、食品加工、建設、不動産など、幅広い業種にプラスの影響を及ぼし、当地の雇用情勢は大きく改善した。

 しかしながら、コロナ禍以降、失業率は全国的に上昇し、沖縄県と全国との失業率の差も再び広がってきている。幸い、今回のコロナショックに対しては、大規模なマクロ経済政策と金融機関による積極的な融資により、事業と雇用の維持が図られた。そのため失業率の大幅な悪化は回避されている。また、景気はコロナショックによる最悪期を脱しており、昨年以降、失業率は全国も沖縄もごく緩やかではあるが改善方向にある。

 仕事があるということは、生活の糧を得るという経済的な観点から大事であるとともに、社会への貢献や自己実現を果たすための手段としても意義を持つ。今後、感染症の影響が和らいでいくもとで、沖縄県の失業率が改善を続け、全国との差が縮まっていくか注目している。