記憶から記録へ 住民の沖縄戦、全41市町村史に きょう慰霊の日


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「平和の礎」に並べられたキャンドルの間を歩く人たち=22日午後7時51分、糸満市摩文仁の平和祈念公園(小川昌宏撮影)

 沖縄は23日、「慰霊の日」を迎えた。住民を巻き込んだ悲惨な地上戦で、多くの命や文化遺産が奪われた沖縄戦から77年。ウクライナでロシアによる軍事侵攻が続く中、戦争の記憶の継承は重みを増している。戦後、沖縄では県史や市町村史、字誌などを通し、住民の戦争体験を記録し継承してきた。沖縄戦関連の市町村史は今年でほぼ全て出そろう。市町村史は地域の沖縄戦を深く学べる材料。体験者が年々減少する中、積み上げてきた記録や戦争遺跡を活用した沖縄戦の主体的な継承が問われている。

 本紙が6月上旬、沖縄戦関連の市町村史の活用について県内41市町村に聞いたところ、活用できていない市町村が約半数の20市町村に上った。活用している21市町村のうち、最も多かったのが「学校に配布」で8市町村、次いで企画展が7市町村だった。オンラインで公開しているのは予定も含め、7市町村にとどまった。新版や予定があるのは6市町村にとどまった。自治体によって活用に濃淡がある。

 恩納村では沖縄戦の編さん担当者が学校と連携し、地域にある戦跡について紹介するなど平和学習に取り組む。名護市では、市史を基に教材を作成。沖縄戦と戦跡を身近に感じられる内容だ。

 活用が進まない背景には、編さんを担う職員の雇用形態の問題や、資料やデータの蓄積が引き継がれていない課題がある。県地域史協議会の島袋幸司代表は「地域史活用の課題は、本の完成で事業完了となる計画にある。人材の継続雇用が重要だ」と指摘する。市町村史の内容を都市計画の部署などと共有し、戦争遺跡の保存・活用やまちづくりへ反映することも提案する。

 戦後しばらくは、市町村がまとめた文書でも沖縄戦の犠牲を「殉国美談」として描く傾向があったが、71年の県史「沖縄戦記録1」が住民の戦争体験を聞き取り、記録する手法をとった。市町村史などがこれに続き、住民目線で戦争の実相や教訓を得ることにつながってきた。

 23日は、糸満市摩文仁の平和祈念公園で午前11時50分から県と県議会主催の沖縄全戦没者追悼式が開かれる。昨年より規模を拡大し約340人が参列する予定で岸田文雄首相も出席する。首相が出席するのは3年ぶり。玉城デニー知事は、初めて公募した平和宣言を読み上げる。(中村万里子まとめ)

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