6月23日は沖縄戦の組織的戦闘が終結したとされる「慰霊の日」。沖縄では県主催の全戦没者追悼式が開かれるほか、県内各地で慰霊祭が執り行われ、島中が不戦の誓いと祈りに包まれる。そんな慰霊の日に聴きたい曲は何ですか?琉球新報公式ツイッター、インスタグラムなどで聞いた。寄せられた中から特に支持が多かった10曲を紹介する。
(玉城江梨子)
「泣ける」…HY、モンゴル800、Cocco、かりゆし58
やはり多かったのは、沖縄出身のアーティストの曲だ。まずはHYの「時をこえ」。ボーカル&キーボードの仲宗根泉さんが祖母から聞いた戦争の話が基になっているこの曲には「毎年慰霊の日に聴いている」「涙が出る」などのコメントが寄せられた。
この曲について仲宗根さんは2019年の取材でこう語っている。
「戦争の映画などでは敵味方という描かれ方とするし、幼いとどうしても『どっちが悪い』と考えてしまう。でも実際に戦争を体験したおばあは『どっちが悪いじゃないよ。大事なのはみんな助け合うこと。命が大事だよ。命はみんな平等だよ』って言っていたんです」
続いては、モンゴル800の「himeyuri~ひめゆりの詩~」。2015年の慰霊の日にYouTube内で先行配信。戦後70年への思いや平和への祈りを込めた一曲だ。ロック調の音楽に乗せ、歌詞には「平和と呼ぶには遠く 歴史にするには早く」「記憶に残せない深い傷を 慰める術はないものか」とメンバーの視線で歌っている。
メンバーのキヨサクさんは6月23日、ひめゆり平和祈念資料館支援の有料配信ライブを行う。「沖縄戦を体験した人が家庭にいる割合がだいぶ減っている。ひめゆり平和祈念資料館が伝え続けていることはとても大事だし、語り部が高齢化し世代を引き継ぐ境目で自分に何ができるかを考え、支援ライブにつながった」と思いを語る。モンゴル800の楽曲はこのほか「琉球愛歌」にも多くの票が集まった。
戦争には触れていないが、Coccoさんの「ジュゴンの住む丘」には「大浦湾に現れたジュゴンに捧げられた曲だけど、聴きたくなります。 当時、戦争に巻き込まれていくいろんな立場の人々に通ずる歌詞だなぁ…とすごく思うし、当時のとある人物にどうしても重なって。 聴きたいし、歌いたくなる曲です」との思いが寄せられた。
かりゆし58の「ウージの唄」は沖縄の情景と戦場の記憶を紡ぎ、「憎むより愛せ」と歌う。ツイッターでは「『憎むより愛せ』という歌詞が泣ける」とコメントがあった。
サザンもミスチルも「沖縄」を歌う
県外のアーティストの楽曲も沖縄戦や平和について歌ったものは多い。代表格はTHE BOOMの「島唄」。沖縄戦の悲劇と平和への思いを歌い大ヒットした一曲だ。ツイッターでは「わたしにとって沖縄のことを知ることができた歌。聴くたびに沖縄に思いを馳せる歌」というコメントがあった。
ボーカルの宮沢和史さんは「沖縄を巡った時、ひめゆり資料館やチビチリガマなどを見て回った。沖縄戦のことを全く知らなかった自分に恥ずかしさを感じた。沖縄のことを知らない人が本土には多くいる。その人たちに伝えたい思いで“島唄”を広めた」と当時を振り返っている。
Mr.Childrenのアルバムの一曲「1999年、夏、沖縄」を挙げる人もいた。サザンオールスターズの「平和の琉歌」は三線の音をバックに「この国が平和だと誰が決めたの」と問いかけ、「愛を植えましょう。この島へ」と歌う。この曲はネーネーズが歌ったバージョンを推すコメントもあった。
「ざわわ、ざわわ…」というリフレインが印象的な森山良子さんの「さとうきび畑」は2番目に多い支持を集めた。戦争で死んでいった父親の面影を追う内容で、沖縄全戦没者追悼式の献花の間に流れている。
作ったのは洗足学園大学元教授の寺島尚彦さん。初演は1967年。69年に森山さんがレコーディングし、さらに75年にNHK「みんなの歌」でちあきなおみさんが歌い(後に、森山良子バージョンも)広く知られるようになった。沖縄ではいつしか観光バスガイドたちが歌うようになったという曲だ。コメントでも「修学旅行で初めて沖縄に行ったときに、バスガイドの人が1番から全部歌ってくれて感動した。それ以来、沖縄といえば、さとうきび畑を思い出す」というエピソードが寄せられた。
沖縄音楽の名曲たち
姉妹4人の民謡グループ「でいご娘」が歌う「艦砲ぬ喰ぇ残さー」も多くの人が「一曲」に挙げた。この曲はでいご娘の父で、音楽プロデューサーの比嘉恒敏さんが作詞作曲した。恒敏さんは学童疎開船対馬丸や空襲で家族6人を亡くした。戦後はでいご娘として活動する4人を含む7人の子に恵まれたが、1973年、米兵の飲酒運転で妻シゲさんと共に事故に遭い、死亡した。
長女・島袋艶子さんは「父は最初の家族を戦争で失った。私たちが生まれた、とっても幸せな時に艦砲ぬ喰ぇー残さーができた」と歌について説明し「戦争を忘れることはできないけど、娘たちに歌わせたいなと思ったんだろう。この歌は私たちにとって父の遺言であり、応援歌だ」と語っている。
沖縄出身、DA PUMPのISSAさんは、「喜納昌吉先輩の花」とツイートした。琉球新報の取材にISSAさんは「喜納昌吉先輩は沖縄を代表するアーティストの1人であり、『花』は平和を象徴している歌」とし、「自分も(テレビ番組で)歌った時に平和を願い、心を込めて歌った」とコメントを寄せた。
喜納昌吉先輩の花#慰霊の日に聴きたい歌 https://t.co/D6h34vZsnO
— ISSA from DA PUMP (@ISSA_from_DP) June 22, 2021
「県民歌」とも言える強さだったのは…
圧倒的な支持を集めたのが「月桃」だ。沖縄出身の作曲家、シンガーソングライターの海勢頭豊さんが歌うこの曲は、沖縄全戦没者追悼式で児童合唱団が歌うほか、県内の小中学校の平和学習でもよく歌われている沖縄県民おなじみの一曲。
ツイートも「小学校の時に合唱で歌いました」「子らが小学校の頃、毎年6月は学校でこの歌を歌っていたようで、家でも歌ってました。大学生になった今でも歌っています」「小さい頃からこの時期にはずっと聞き続けてきたし、この歌があったからこそ、遠い歴史の中であった出来事ではなくて、今も続いてる身近なものなんだという意識が自身に根付いてるんだと感じるから」などのコメントが寄せられた。
発表したのは1982年。約40年を経てもなお歌い継がれている名曲だ。
海勢頭さんは「『月桃』は、子どもたちが歌いやすいように明るいメロディーにした。この歌が学校で広がって、子どもたちが大人になっても歌い継がれていることはうれしい。平和な世をつくるために、戦争をしてはならないという『絶対平和主義』が沖縄の心だと思う。コロナ禍で平和教育をすることも難しい状況だが、せめて歌だけでも、歌い続ける勇気があれば、平和な世はつくれる。平和な時代をつくろうという勇気を持って、これからも皆さんに歌ってほしい」と語った。
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