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ルーツを語り継ぐ オーディフホールディングス社長・村野勝子<仕事の余白>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 弊社は昭和58(1983)年に創業し、当初は私立高等学校の寮(学校推薦)としてスタートした。開寮した頃は寮生は4人、厨房(ちゅうぼう)は3人で運営していた。管理栄養士でもある母が朝昼晩の献立を作成して食事を作り、早朝に市場への買い出しもこなしながら寮母を兼務し、親元から離れて暮らす生徒達の高校生活を栄養バランスが取れた『食』で支えたいという想いで営んでいた。

 さらに時代はさかのぼり、明治40年生まれの祖父、普天間善徳は沖縄県立第一中学校(現首里高等学校)に合格をした。入学を機に曾祖母が首里に間借りし、遠方から通学する祖父だけでなく、同郷の学生達も下宿先に集めて食生活の世話をしながら卒業をさせた。昭和初期の話である。学生寮の運営として創業したオーディフグループのルーツが約100年前のそこにある気がする。

 卒業した祖父は沖縄県庁に入庁後も地元の後輩達の面倒を見ていたと聞く。戦時中は職員として県民の避難誘導に尽力した。大変な苦労を乗り越えてきた祖父は63歳という若さで亡くなったが、いつも穏やかで孫である私達皆に優しかった記憶と、名づけてもらった私の名前が大切な形見となっている。

 先般、新聞で2030年には戦前世代が県内の総人口の5%を切ってしまうという記事を目にした。祖父が築いてきた歴史を振り返り、改めて語り継いでいく重要性を強く感じている。これからも先祖の想いを大切にしながら、子や、孫達でしっかりと受け継いでいきたい。