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コロナ禍と銀行券 日本銀行那覇支店・飯島浩太<仕事の余白>


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飯島 浩太(日本銀行那覇支店長)

 日本銀行の重要な役割に、銀行券(お札のこと)を発行し、円滑に流通させることがある。那覇支店でも、日々、金融機関との間で多額の銀行券の受け払いを行っている。銀行券の動きを見ていると色々と興味深いことが分かる。

 那覇支店における銀行券の受け払いには特徴がある。それは、受け入れが支払いを大きく上回っていることである。これに対し全国では、銀行券は、日本銀行からの支払いの方が、日本銀行での受け入れより多く、流通する銀行券の総量は増えている。当地の銀行券の動きの特徴には、県外から多くの観光客が訪れることが関係している。観光客は、県外から銀行券を持ち込み、当地で購入するモノやサービスの支払いを行う。この結果、当地では銀行券の受け入れが多くなる。

 こうした構図は、コロナ禍の影響で変化している。那覇支店における銀行券の受け払いは、2019年度に約1400億円の受け入れ超だったが、20年度は約200億円の支払い超、21年度は約80億円の受け入れ超と、19年度に比べると受け入れ超幅が大きく減少している。

 この背景には、世界的に観察された、不確実性の高まりから現金を手元に置いておきたいというニーズの強まりもある。しかし、当地では何といっても観光客が大幅に減少し、県外から持ち込まれる銀行券が減った影響が大きい。このように、コロナ禍は銀行券の動きにも影響を及ぼしている。お金の動きは経済活動の状況を反映するということを改めて実感させられる。