記者が語る「選挙戦」 若さと実直さで無党派層つかんだ古謝氏 終盤にシャープさと必死さ増した伊波氏<参院選を振り返る>


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 10日に投開票された第26回参院選沖縄選挙区は、名護市辺野古の新基地建設阻止を掲げる「オール沖縄」勢力が支援する無所属現職の伊波洋一氏(70)が27万4235票を獲得し、自民新人の古謝玄太氏(38)=公明推薦=を、全県選挙では異例となる2888票の僅差で破り、再選を果たした。取材班が選挙戦を振り返りつつ、9月の知事選への影響などについて話し合った。

 C 3月に擁立されるまで県外生活が長く、無名だった古謝氏が僅差の勝負に持ち込めたのは、若さと実直なイメージで無党派層にも浸透したことが大きそうだ。

 A 敗れたとは言え今後の期待も高い。衆院選や10月の那覇市長選への擁立論もうわさされる。

 B 急に古謝氏が候補に決まった擁立過程を疑問視し、中には「積極的に支援できない」と話す地方議員もいた。保守地盤の自治体で得票差があまりなかったことに影響したかもしれない。

 C 自民党本部は連日古謝氏の応援に続々と大物議員を投入したけれども、聴衆が思ったよりも少ない場面が間々あった。「動員疲れ」もあったのだろう。

 B 伊波陣営は、相手候補が「無名の新人だから」と当初は楽観視する雰囲気があった。2016年の選挙で、10万票差で勝利したことにあぐらをかいていた印象だ。

 D それでも伊波氏が何とか再選を果たせたのは「参院選を落とせば知事選も危ない」との危機感が強まったのが大きい。火が付いたのが世論調査で接戦が報じられてからという緩慢さはあるが、逆に革新層や政権批判層の底堅さが浮き彫りとなった。

 C 伊波氏の演説は選挙戦序盤は冗長だったが、終盤に掛けてシャープになり、必死さを感じるようになった。そのことも支持・支援者らの心に火を付けた側面があるのではないか。

 A 逆に古謝氏の訴えは論理的な分、必死さが伝わりにくいという声も陣営内からは聞こえた。

 B 県選管は昨年の衆院選と同じようにポスターやのぼりなどの違法掲示物対策を強化したが、両方の陣営から「選挙に熱心な高齢層は、のぼりやポスターを見て火が付くのに…」とのうらみ節も聞こえた。新たな戦い方を模索する時期に来ているのだろう。


<座談会出席者>

記者座談会出席者は大嶺雅俊(政経グループ)▽當山幸都(同)▽梅田正覚(同)▽比嘉璃子(暮らし報道グループ)

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