根強い人気の裏で…どうなる?「あちこーこー」島豆腐 スーパーや生産者の対応は HACCP衛生管理義務化1年


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右端の容器もあちこーこー島豆腐の販売エリアだったが、納品数が減ったため別の商品売り場に変わった=6日、那覇市西のタウンプラザかねひでにしのまち市場

 国際的な衛生管理基準HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が昨年6月から義務付けられ、あちこーこー島豆腐に出合う機会が減っている。

 大手スーパーのタウンプラザかねひでは、温かい島豆腐の数がハサップ適用後に約20%減った。購入後、食べるまでの時間を計算して店頭に並べておける販売時間は2時間に。このため、ロスを出さないよう業者は生産量を減らしている。売り場自体が縮小傾向にあるという。豆腐業者は新たな梱包材の導入や販売ルート変更などで工夫を凝らすも経費がかかり、小規模事業者にとっては事業継続が難しくなっている。

 県豆腐油揚商工組合によると、ハサップ適用後にあちこーこー島豆腐の販売をやめた業者は少なくとも5件あり、廃業した事業者もある。那覇市の島豆腐業者は、あちこーこー島豆腐の販売から撤退し、パック豆腐のみの販売に切り替えた。代表者は「納品条件が厳しかった。条件を満たすには経費がかかる」と話す。

 糸満市の老舗豆腐業者は、ハサップ適用のために従業員を20人から30人に増やし、アルミシートや保温材、容器を新しく導入するなど経費をかけて対応している。店頭に並ぶ時間が短くなった分、配送回数を3回から5回に増やした卸先もある。代表者は「あちこーこー島豆腐文化は守らないといけない。パックだけではすぐに県外から参入されてしまう。同業者がいなくなれば、私たちにとっても打撃だ」と危機感を示す。

 原材料の価格高騰も事業者の負担としてのしかかる。県豆腐油揚商工組合の瑞慶覧宏至理事長は「原材料高騰で廃業がもっと出てくるのではないか」と懸念する。自身が経営する池田食品(西原町)では、6月から島豆腐を5%値上げした。ここ半年間で大豆の価格が約20%高騰し、本来は25%の値上げが理想だが、企業努力で抑えているという。梱包(こんぽう)材や光熱費など全ての値上がりが経営に厳しい向かい風となっている。

 一方で、あちこーこー島豆腐の人気は根強い。糸満市西崎のファーマーズマーケットいとまん「うまんちゅ市場」では豆腐を選ぶ客の姿が絶えない。週に3回、あちこーこー島豆腐を買いに来るという糸満市在住の女性(78)は「パックとは全然違う。売り場を通ると香りが良くてつい買ってしまう」と話した。

(中村優希)


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