野生化したヤギ「想像以上にいる」世界自然遺産に登録から1年 西表島 生態系への影響を懸念 駆除へ


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西表島で撮影されたノヤギの群れ=2020年10月14日、竹富町西表島(環境省西表自然保護官事務所提供)

 世界自然遺産に登録されてから1年が経過した沖縄県竹富町西表島で、家畜から野生化したヤギ(ノヤギ)が増殖し、生態系や環境への悪影響が懸念されている。県は2022年度内に県対策外来種リストの「重点対策種」にノヤギを位置付ける方針で、10月にも試験的な駆除を始める。

 ヤギは国際自然保護連合(IUCN)が「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定。鹿児島県の奄美大島では、ノヤギによる食害で土壌流出が進み、岬でのがけ崩れなどが発生している。

 環境省西表自然保護官事務所によると、ノヤギが多く見つかるのは西表島東部の古見岳周辺のエリア。17年ごろからイリオモテヤマネコのモニタリングカメラにノヤギが写るようになり、同じ時期に島民からの目撃情報が増えたという。

 環境省は20年度に緊急捕獲の名目で西表島のノヤギを3匹駆除。21年度も捕獲手法の検討を目的に、12月から3月末にかけて61匹を駆除した。
 西表自然保護官事務所の担当者は「昨年以前は『100匹くらいいるかもしれない』という雰囲気だったが、昨年61匹も駆除されたことで『想像以上にいるかもしれない』という感覚になってきた」と話した。

 同事務所は、ヤギの適正飼育条例の制定を検討するよう、竹富町に働きかけているという。

 県の対策外来種リストはヤギなど375種が登録されている。リストの中でも重点的に防除に取り組む「重点対策種」はマングースやタイワンハブ、グリーンアノールなど15種で、ヤギは含まれていない。22年度内にリストを見直し、ヤギを重点対策種に格上げする方針だ。

 当初は重点対策種に格上げした後に生息調査や捕獲方法の検討を始める予定だったが、ノヤギの駆除を求める声が高まり、前倒しで駆除に着手することを決めた。
(稲福政俊、西銘研志郎)

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