沖縄新21世紀ビジョン策定、個別政策の進展は?<玉城知事の4年と公約点検>②沖縄振興計画


社会
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那覇の市街地=2022年2月

 玉城デニー知事が1期目の任期満了を迎える9月29日まで、残り2カ月を切った。豚熱や首里城火災、新型コロナウイルスなどに見舞われる中、沖縄の日本復帰50年の節目を迎え、第6次沖縄振興計画を策定し、沖縄の将来像を描く取り組みを推進した。2018年の県知事選では「新時代沖縄」「誇りある豊かさ」「沖縄らしい優しい社会」を掲げ、291項目の公約を示したが、4年間で「完了」したのは8項目にとどまる。玉城知事の公約を点検しつつ、4年間の県政運営を振り返る。

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沖縄振興計画 策定も個別政策停滞

 玉城知事は公約に「沖縄が日本経済をけん引する『新たな沖縄振興計画』を策定する」と掲げた。5月に2031年度まで10年間の「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」(振計)を策定したことで公約の大筋は達成したが、鉄軌道整備など個別政策ごとで進展が滞る例もある。

 振計には、海洋環境・海洋資源の保全と持続可能な活用の調和を図る「ブルーエコノミー」の推進が初めて盛り込まれ、海洋政策の拠点を設ける構想も明記した。これも「海洋産業の推進」の公約に合致する。ただ、ブルーエコノミーを推進する所管課は定まっておらず、政策の具体化には至っていない。

 「鉄軌道の導入」も公約し、「沖縄県における南北骨格軸を形成する新たな公共交通システムを整備する」と打ち出していた。ただ、鉄軌道導入コストに対する経済効果を示す「費用便益比」(B/C)は、県と国の試算で依然として開きがあり、議論は停滞している。任期中に鉄軌道整備を前進させることはできなかった。

 主要政策に盛り込んだ「万国津梁(しんりょう)会議の設置」は着実に進んでおり、テーマごとの専門家が県の今後の政策を議論する。米軍基地問題やSDGs(持続可能な開発目標)などの会議で練られた方針は、県の取り組みや振計の書きぶりに反映されている。

(梅田正覚)
 

離島振興 補助で移動費低減

 玉城県政は主要政策で掲げた「離島移動コスト、生活コスト低減へ支援」として、一括交付金を活用した離島住民対象の運賃補助事業を実施している。同事業で離島航空路12路線、離島航路24航路の運賃を補助し、移動費低減を図る。

 生活に欠かせない情報通信環境を提供するため、離島間の光ファイバー網整備も進める。既に県と民間企業の事業で、海底光ケーブル網は県内全離島の整備が完了した。

 加えて、市町村役所・役場がある約20の離島で双方向からケーブルがつながる「ループ化」事業も、最後の区間となる北大東村と南大東村間で工事が進む。25年度に完成予定で、より安定的な通信環境が構築され、災害への備えとなる。

 ただ、各種生活コスト低減策やインフラ整備を進めても、離島地域のうち宮古島と石垣島をのぞくと人口減少傾向に歯止めがかからない。特に一部の小規模離島は全人口の半数以上が65歳以上の「限界集落」となる見通しで、対応が求められる。

(梅田正覚)

 

【玉城知事の4年と公約点検】

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