観光中心の産業構造 経済成長加速するも…コロナで脆弱さ露呈<玉城知事の4年と公約点検>③経済振興


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観光客が訪れる守礼門(資料写真)

 玉城デニー知事が1期目の任期満了を迎える9月29日まで、残り2カ月を切った。豚熱や首里城火災、新型コロナウイルスなどに見舞われる中、沖縄の日本復帰50年の節目を迎え、第6次沖縄振興計画を策定し、沖縄の将来像を描く取り組みを推進した。2018年の県知事選では「新時代沖縄」「誇りある豊かさ」「沖縄らしい優しい社会」を掲げ、291項目の公約を示したが、4年間で「完了」したのは8項目にとどまる。玉城知事の公約を点検しつつ、4年間の県政運営を振り返る。

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 県内入域観光客数が目標の1千万人を突破し、観光業が絶好調期を迎えた2018年度に玉城知事は就任した。19年もクルーズ船の寄港回数が全国1位となるなど、インバウンド客も大幅に増加した。活況な観光業に後押しされ、不動産などを中心に県外からの投資が集中するなど、経済成長は加速した。

 だが、19年秋以降の日韓関係悪化による韓国客の減少、20年に入ってからは新型コロナウイルスの世界的な流行によって経済活動は失速。人流減少による観光業の停滞が県経済全体の落ち込みとなって広がるなど、外的要因によって左右される産業構造の脆弱(ぜいじゃく)さがコロナ禍で露呈した。

 玉城知事は畜産品や水産品など輸出相手国の衛生基準に対応した「高度衛生加工処理施設」の設置を主要政策に掲げ、販路拡大に向けた施策を展開した。糸満市内に水産品の高度衛生管理型荷さばき施設が今年4月に完成し、10月から使用開始となり、加工場の整備も今後予定している。

 一方、20年以降は感染症の影響でグアム周辺のマグロ操業が止まったほか、航空貨物路線も停止した。食料品輸出額は玉城知事が就任した18年と比べ、20年は約26・3%減の約26億1千万円となるなど、大幅に落ち込み、海外販路の安定的な確保も課題となっている。公約で掲げた県民所得の向上、雇用の質の改善も道半ばで、取り組みが求められる。

(池田哲平)

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