「子どもを預けていた保育園でいったい何があったのか。真実が知りたい」。7月30日に那覇市内にある認可外保育園で生後3カ月の男児が亡くなった件で、男児の父親が14日までに、本紙の取材に答えた。これまで、園側からの謝罪はあったものの、保育園で男児がどのように過ごしていたかなどの詳細な説明は受けていない。男児の両親は詳細な情報の開示を求めている。
亡くなった男児の名は涼空(りく)ちゃん。空が澄んだ4月に生まれた。甘えん坊で、ミルクを飲むスピードはマイペース。成長とともに笑顔を見せる機会が増えていたという。
父親によると、7月30日午前8時ごろ、涼空ちゃんの母親が保育園に預けに行った。この日、健康上の異常は感じられなかった。正午ごろ、用事を済ませた母親が園で迎えると、涼空ちゃんはぐったりとし、目や口は開いた状態、体は冷たく息はなかったという。異変に気付いた母親は、心肺蘇生を施した。119番通報の際、園長は「呼吸はしている。子どもが急変した」と電話越しに救急隊員に説明した。
現状から外れた説明をする園長から受話器を奪い、母親は「息をしていない」と危機的な状況にあることを伝えた。救急隊の指示に従い心肺蘇生を施す母親に、園長は「息はしている」と呼び掛けるばかりで、心肺蘇生を代わるなどの協力は見られなかったという。 父親が涼空ちゃんと対面したのは搬送先の本島南部の病院だった。静かに目を閉じ横たわる姿に「信じられない気持ちだった」と声を詰まらせる。
涼空ちゃんが亡くなり、園側からは当時の状況について説明があった。しかし、不明な点が多く、説明を再度求めている。園の説明によると、30日午前9時50分ごろ、園に出勤してきた職員が涼空ちゃんの異変に気が付いた。「この子、大丈夫ですか?」と問いかけたところ、園長は「大丈夫だよ」と応対したという。
この時、園が涼空ちゃんのどのような「異変」に気付き、どのような経緯を経て「大丈夫」との判断に至ったのか、園内に監視カメラなどはなく、保育状況の把握につながる客観的な情報は少ない。
父親は「職員が異変を感じた際、救急隊を呼ぶなどのなんらかの措置があれば、涼空には違った未来があったかもしれない」と話す。保育園は琉球新報の取材に、調査中につき話すことはできないとしている。
涼空ちゃんが亡くなってから約2週間。父親は「私たちは涼空が亡くなったことを、ずっと背負って生きていくことになる。園側には何が起こったのか、全て正直に話してほしい」と語った。
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<おことわり>両親の意向を踏まえ、記事中では亡くなった男児の名前を一部実名で表記しています。
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