全数把握見直し「メリットない」の声も 沖縄県、医療現場混乱の懸念 週末に専門家会議で対応議論へ


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 新型コロナウイルスの感染症対策をめぐって岸田文雄首相が、感染者数の全数把握を見直し、医療機関などによる感染者の発生届を自治体の裁量で高齢者や妊婦などのハイリスク者に限定できると表明したことに、沖縄県対策本部内では「導入するメリットがない」との声も挙がっている。

 県では発生届の情報を一元化して入院調整などに当たるシステムが軌道に乗っており、新たな基準を追加することで業務が煩雑になり、医療現場の混乱を招きかねない。県は週末にも専門家会議を開き、対応を議論するという。   

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 県は、医療機関の状況をリアルタイムで把握しながら、入院調整や自宅療養者の健康管理、生活物資の配達など網羅的に対応してきた。流行拡大時は医療機関の負荷を軽減するため、救急搬送時に遠隔診療で薬を処方して自宅待機としたり、待機ステーションへ案内したりした事例もある。

 仮に発生届が高齢者などに限定されると、対象外となる軽症者の待機期間などが把握できず、結果的に流行拡大につながる恐れがある。無料検査などで陽性が判明した場合、年齢以外のハイリスク要因を誰が確認してどのように発生届を出すのか不明で、新たな業務が増えかねないという。

 救急搬送においても課題が発生する。これまでの流行拡大時には、軽症患者の119番にも県対策本部で入院の是否を決めてきた。しかし発生届を限定すると対象外の患者への県の介入がなくなり、救急隊や各医療機関が独自に陽性を確認したり、入院調整したりする必要があり、医療現場の負担増加が懸念されるという。

 県対策本部内の担当者らは「感染が収束していない中では、重点化を取り入れる理由が見つからない」と語った。

 (嘉陽拓也)

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