県知事選や統一地方選の投開票日が11日に迫っている。各地で投票を促す取り組みが広がる中、視覚障がい者にとっては投票したくても、候補者を選ぶ判断材料が少なく、投票するまでにハードルがある。「(候補者について)分かりやすくまとめた選挙情報にアクセスできない」「投票に時間がかかる」などの課題がある。
NPO法人ロービジョンライフ沖縄の理事長で弱視の本永美代さん(71)=那覇市=は、選挙の情報は選挙管理委員会が出す選挙公報を点字化した資料か、音声で政策などを読み上げるCDで収集する。
しかし、選挙公報の点字版や音声版を作成している沖縄点字図書館によると、依頼を受けているのは県と那覇市だけ。多くの自治体は視覚障がい者に対応した選挙情報を提供していない。
さらに議員選挙など候補者が数十人となると本永さんは「音声版を最後まで聞けない。集中力が切れてしまう」。また、手元に届くまでに時間がかかり「判断する期間が短い」ことも課題だ。
ラジオやテレビの音声もあるが「(政策の比較表など)視覚的に分かりやすい情報はない」とし、音声のみで理解し判断することの難しさを語る。
また、投票は点字でも可能だが、失敗すると一から書き直さないといけない。係の人に代わりに書いてもらう代理投票もあるが、大声で候補者名を確認されることもある。「点字での投票は時間がかかる」と話した。
本永さんは投票用紙に自分で記入することもあるが、特に難しいのは枠の中に字を書くこと。はみ出すと無効になるため、枠に合わせて投票用紙を折る工夫をしている。本永さんは書類にサインをする時に使用する、サインする場所を示す穴があいたプレートを持ち歩いている。「選挙は手間がかかるため、投票を諦めてしまう人もいる」。選挙権行使のハードルは高い。
(金盛文香)