沖縄戦当時の高校生の戦争体験「現代につなぎたい」 継承へ本出版、山梨の元小学校校長が講演


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著書「はっちゃんの沖縄戦」の発刊を記念し講演する高野裕さん=23日、山梨県身延町の常幸院

 【山梨】書籍「はっちゃんの沖縄戦」(新星出版)を著した山梨県内の元小学校校長・高野裕さん(69)=甲府市=の講演が23日、身延町の常幸院で開かれた。同書は、沖縄戦当時の昭和高等女学校生徒・上原はつ子さんの沖縄戦の記憶を次代へつなぐ活動を伝える。高野さんは「高校生の時に戦争を体験したはっちゃんの思いを、本に著すことで現代の高校生につないでいきたい」と語った。

 上原はつ子さんが通った昭和高女は山梨県北杜市出身の八巻太一氏(1878~1952年)が1932年に設立した。学校は沖縄戦で消滅したが、同窓生が記念碑の建立を計画。設立者の八巻氏が山梨県甲府市の校長を務めた池田小学校へも記念品を贈ることも決めた。上原さんが現在の池田小へ連絡をとったのが縁で2011年当時に同小校長だった高野さんとつながった。それ以来山梨と沖縄を結ぶ交流が続いている。

 講演で高野さんは沖縄戦の経緯を解説。20万人超の戦死者が出たのは教育現場を含め戦陣訓が浸透し強制集団死につながったのも要因の一つに挙げ、沖縄戦の特徴として「身内も含めた根こそぎ動員で人権もない。軍隊も住民を守らない。沖縄に対する差別意識があったのではないか」と話した。今も米軍基地がひしめく沖縄の現状を説明し「自分にとって平和とは何かを定義し何ができるかを考えたい。大上段に構えなくても平和につながることはたくさんある」と述べ、ボランティアなど身近な活動から人とつながって平和を考える機会をつくることの大切さを伝えた。

 会場の常幸院では17~25日、沖縄復帰50年平和企画展が開催された。本紙の沖縄戦新聞や山梨日日新聞の沖縄関連特集紙面、オキナワグラフの写真資料など数多くの資料展示が行われた。

(斎藤学)