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自転車と沖縄と私 星明彦・沖縄総合事務局運輸部長 <仕事の余白>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 私には、命に力をくれるものがある。一つはロードバイク。練習が辛く高校時代一度諦めた自転車に、当時高校生(沖縄高専1年生)だった息子の誘いで、つい乗ってしまった。南部一周。あれ、楽しい。こころ躍る。それを端緒に、近年は、コロナ禍の時期を除き、全国のロードレースを転戦し、コーチや仲間らと共に1年を過ごす日々。自転車、出会った方々、自然や街並み、与えられた命から、人生で大事なことを教わってきたように思う。

 もう一つは、沖縄。コロナ禍と仕事で沖縄に帰れない日々が長く続いたが、この夏、長年の希望だった沖縄赴任がかなった。南城市内の高台で感じた呼吸のしやすさ。あぁ、東京ではそんなにも心と身体が歪んでいたのか。私は宮城県生まれ。だが、真っ黒に日焼けした顔も見た目もうちなんちゅ。星の姓も琉球に所縁(ゆかり)があるではないか。

 親と家族は、東日本大震災での実家被災をきっかけに沖縄へ移住。当初2週間の避難が、もう11年。我が子たちは地域の方々の暖かい気持ちに触れ、島の文化や歴史を学びながら、島の子として大事に育てていただいた。ここは我々の命を活かし、心を育てた、ふるさと。

 「東京から見た日本が唯一の日本ではない。沖縄から世界を見て、全ての命の祝福を感じてほしい。その命と世界の無限の力を引き出せ」。11年前、その思いで沖縄に連れてきた子供達と、また自転車に乗り、笑いながら、これからのことを話してみよう。