琉球新報社 
23日投開票の那覇市長選に向けて琉球新報社が実施した立候補予定者座談会では、無所属新人で前県議の翁長雄治氏（35）＝共産、立民、社民、社大、れいわ、にぬふぁぶし推薦＝と、無所属新人で前副市長の知念覚氏（59）＝自民、公明推薦＝の2氏がそれぞれが目指す県都・那覇市のビジョンを掲げた上で、経済振興や子育て・教育環境整備で独自の施策を打ち出した。クロス討論では政治姿勢などを巡り、白熱した議論を展開。16日の告示を前に論戦は熱を帯びた。知花亜美琉球新報暮らし報道グループ長が司会を務めた。（’22那覇市長選取材班）（文中敬称略）
子育て・教育
子ども相談所を設置 翁長氏
不妊治療に独自支援 知念氏
―子育て・教育環境整備の手法は。
翁長 県政と連携し子ども医療費の高校卒業までの無料化、学校給食の段階的無料化など、子育て教育にかかるお金の心配を減らしたい。子どもの貧困対策では現在市が行っている生活困窮者自立支援制度の各種事業を拡充したい。住宅確保要配慮者居住支援協議会を設置したい。高齢者、障がい者、低所得者、子育て世帯等の住まい探しを支援する。子ども相談所（児童相談所）を設置し、子育ての悩み、子どの悩みを専門家に相談しやすい環境づくりを進める。ヤングケアラー支援、民間と連携した子ども食堂支援、給付型奨学金の拡充など地域民間と連携し、伴走型の福祉行政に取り組む。
知念 妊娠、出産、保育、就学、進学などの各段階できめ細やかな支援を行いたい。例として不妊治療への独自支援、妊婦検診への助成を行い、産後うつ予防や新生児への虐待予防を図るため産婦健診を助成したい。保育士の確保に資する施策を推進し、保育事業の質の向上を目指す。子どもの居場所や子ども食堂への支援を拡充する。小中学校の給食費無償化も去る県知事選で知事が約束しており、市町村負担分が生じるなら積極的に対応したい。子育てママクーポンも発行したい。給付型奨学金制度の拡充や子どもの権利条例整備などを展開しながら、子育て教育環境整備を後押ししたい。
経済振興
企業のＤＸ化を促進 知念氏
観光支援で経済再生 翁長氏
―那覇市の経済振興の手法は。
知念 那覇市は他の大都市と肩を並べるほどのポテンシャルを秘めている。那覇軍港の返還、跡地利用も含めて、観光を主力とする魅力を武器に国内外から数多くの投資を呼び込み、市の経済を活性化することが非常に重要だと考えている。また県内企業の意欲を促進する政策、既存の1万7千社の付加価値を増大させるためにDX化を支援する政策を展開する。複合的な政策で域内総生産を高め雇用者所得を増やす。そのためには人材育成も重要でそのための政策も進める。自立度を示す循環率で那覇市は112％、県が80％と市が沈めば県が沈む状況だ。使命感を持って事に当たっていきたい。
翁長 まずコロナからの経済回復、物価高騰対策に取り組みたい。市独自も含め、県や政府と一体となり必要な支援策を講じたい。沖縄のゲートウェイとして那覇空港と那覇港がある。コロナの影響を大きく受けた観光産業支援に力を入れることが市全体の経済回復、再生につながると考えている。スポーツツーリズムや医療ツーリズムといった観光の多様化を図ることが重要だ。沖縄、那覇でなければいけないという観光の理由を市民とこれから作りたい。市内事業者の事業継続、継承のサポート体制を行政として構築することが大切だ。スタートアップ企業への支援も深め、新たな産業構築も広めたい。
財源と推進費
特定費自立妨げ危惧 翁長氏
あらゆる手段を駆使 知念氏
―財源確保策と沖縄振興特定事業推進費の評価は。
翁長 市税の観点では年少人口、生産年齢人口を増やすことが重要だ。子育て政策に力を入れることで子育て世帯を増やしたい。人口増、地域活性化、税収増の好循環をつくる。宿泊税導入も玉城デニー県政と協調しながら検討したい。
沖縄関係予算が減らされる一方、県を飛び越えて市町村に直接交付する特定事業推進費が拡大傾向にあることで、政権との関係で予算措置に差が付き、自立発展の妨げにならないかと危惧している。市町村と県、政府の健全な関係を取り戻す。
知念 主に自主財源が重要だ。那覇市の税収は10年前より100億円増え、主に固定資産税が順調に伸びている。今後は土地を確保するため、長期的には那覇軍港の跡地利用に取り組む。密集市街地にも手当てをして新たな空地をつくる。
LRTなどハード部分もやる必要がある。利便性のある都市が生き残る。DX化で企業の付加価値を付け、給与が上がることで市民税を増やす。特定事業推進費を含め、あらゆる手段で財源を確保する。したたかな行政をやっていく。
【動画あり】翁長氏、知念氏が論戦 那覇市長選立候補予定者座談会
【詳報①】那覇市長選 軍港移設、辺野古への対応は？ 立候補予定者座談会
