外来大型ヘビ用のわな、捕獲効率が3倍に 固有種を守るため沖縄県が重ねた改良とは?


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わなを改良し、タイワンスジオの捕獲効率を3倍に上げた小笠原敬さん(左)と末吉康佑さん。右がハブ型、左が改良ハブ型=9月20日午後、浦添市経塚の県環境科学センター

 希少な固有種に甚大な被害をもたらすと指摘されている特定外来生物の大型ヘビ「タイワンスジオ」。生息・繁殖する沖縄島中部から分布域は北上している。県は捕獲・防除を強化しているが、対策の鍵の一つがわなの捕獲効率向上だ。ハブに比べて詳しい生態はまだ分からないところもある。防除に携わる人々は研究を基に試行錯誤しながら、わなの改良を重ねている。

■難敵

 「なぜわなに掛からないのか」。県が行うタイワンスジオ対策事業を受託する県環境科学センター環境科学部企画計画課の小笠原敬課長と末吉康佑さん、北村誠さんは長い間、疑問が拭えずにいた。

 ハブ対策に長らく取り組んできた沖縄では、捕獲効率が高いわなが開発・改良されてきた。しかし、タイワンスジオがそのハブ型にはなかなか掛からないのだ。

 防除事業でわなの改良が始まったのは2015年。箱型か円筒型か、大きさ、餌、仕掛ける時期・期間―。さまざまな組み合わせを試した。ハブ型だけではなく、大型ヘビ捕獲のためにグアムで開発されたもの、ニュージーランドで開発された捕獲ではなく捕殺するものも試した。

■生態

 しかし、どれも思うように捕獲できない。首をかしげる日々が続く中、末吉さんは生体観察を通して、わなに頭を入れたタイワンスジオが餌を捕れないとみるや体を後退させて脱出する習性を発見した。

 どこまで誘い込めば抜け出せなくなるか。試験を重ねて出た結果は60~70センチ。体長が最大270センチに達するタイワンスジオに合わせて箱型のわなを大きくしただけではなく、箱の中に仕切りを設けて、より奥に誘い込む構造にした。

 「改良ハブ型」と名付けられたわなの捕獲効率はハブ型の3倍となった。

■課題

 偶然目撃した人が捕まえるか、仕掛けたわなで捕らえるか。現在の捕獲方法はこの二つのみ。ほとんどは目撃者の手による。「小さな集団のうちに防除するためには、偶然によらない、効率的なわなに改良しないといけない」と小笠原さんは力を込める。

 改良ハブ型は縦70センチ、横30センチ、高さ15センチと大型だ。かさばるために運びにくく、入り組んだ山林の中には仕掛けられない難点がある。

 「捕獲効率は高くなったが、タイワンハブと比べるとまだ低い。小型化もしていかないといけない」と末吉さん。希少な固有種を外来種から守る闘いはこれからも続く。

(安里周悟)

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