【深掘り】地方の自立権を否定 辺野古、沖縄県上告を棄却 設計変更訴訟に影響も


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新基地建設が進む名護市辺野古地域=8月2日

 名護市辺野古の新基地建設を巡り、埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の裁決は違法だとして県が国を相手どり闘った抗告訴訟は、3審を通じて原告適格を認めない「門前払い」となり、裁決の違法性には踏み込まないまま終えた。今回の判決は、軟弱地盤の改良に伴う設計変更申請を不承認としたことに対する抗告訴訟にも影響が出かねず、県は戦略の見直しを検討する構えだ。

 「地方自治体と国はあたかも上級、下級の関係にあると言わんばかりの判断だ」

 判決から約2時間後に県庁で会見した玉城デニー知事は、最高裁判決を強い口調で批判した。

 衝撃

 県にとって、判決が厳しい結果となるのは織り込み済みだった。

 だが、県が想定したより「乱暴」(県関係者)な判決を受け調整に時間がかかり、会見開始は当初の想定から大きくずれ込んだ。

 県庁内で衝撃を広げたのは、判決が法定受託事務について審査庁(国交相)が出した裁決の適法性は、抗告訴訟で争えないとしたことだ。

 国が自治体の判断を直接否定できる「裁定的関与」については、県が見直しを訴え、全国知事会は要望を受け入れて2021年に見直しを国に提言した経緯がある。

 今回の判決は地方自治の根底にある自立権を否定したことにもなる。

 県関係者は「(国が包括的な指揮監督権限を持っていた)かつての機関委任事務と何が違うのか。長年の地方分権改革の取り組みが有名無実化する」と強く批判した。

 影響

 新基地建設計画全体の阻止を目指した埋め立て承認撤回を巡る県と国の法廷闘争は終局したことになる。

 より大きな問題は、今回の判例が、県が移設計画阻止の“切り札”としてきた変更申請の不承認を巡る抗告訴訟にも影響を与えかねない点だ。

 県の判断を国交相が取り消す裁決をし、これを違法だとして県と国が法廷闘争に入る流れは不承認を巡る抗告訴訟とも類似点があるためだ。

 玉城知事は「(不承認の)抗告訴訟への影響は、判決内容を精査し行政法学者や弁護士とも相談した上で検討したい」と述べるにとどめた。

 一方、被告となった国側は上告棄却の知らせに「予想通りの判決で、驚いた人はいないだろう」(防衛省関係者)と余裕を見せた。

 玉城知事はこの日の会見で、国に対して対話を通じた解決を模索する考えも改めて示し、国に対話に応じるよう求めた。だが、国側は消極姿勢。変更申請の不承認を巡る訴訟など県と国の法廷闘争は今後も続く中、対話が行われる見通しは立っていない。
(知念征尚、明真南斗)