砂から目を出して周りをキョロキョロ…
海には潮の満ち引きがありますね。特に「潮間帯」という、干上がったり海になったりを繰り返す浅い場所では、生き物たちも潮のリズムで活動しています。
干潟観察の終わり頃、もうそろそろ潮が満ち始めるな…という時間に姿を見せるのが、このカニ。ソデカラッパです。カラッパって変わった名前ですが、これはラテン語の学名そのまま。日本語ではこのカニの呼び名がなかったのかな?
カラッパの仲間の特徴は、何と言っても背中を丸めたような甲羅の形と、幅の広いハサミです。大きいカニだなぁと思っても、カラッパは甲羅の縁が横に大きく張り出しているだけで、おなか側の身の部分はとても小さい!そこに、細い足が並んでいます。
砂地に住むこのカニ、隠れたい時は、幅の広いハサミで砂を押し出すような仕草をして、あっという間に体を砂に潜らせてしまいます。二つの目だけを砂から出して周りを伺う様子もユニーク。お腹が空いたら、砂から出てきて獲物を探しに砂地の上をウロウロ歩き回ります。それが、干潟でこれから潮が満ちてくるというタイミングなのです。
好物は貝。右手のハサミに大きな出っ張りがあり、これを巻貝のふちに引っ掛けたり、二枚貝をはさんでひねって、器用に割って食べてしまいます。まるで缶切りバサミ。体に道具を持って、それを使うなんて、よく考えたらすごいカニですね!
Vol. 59 ソデカラッパ
Calappa hepatica
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:カラッパ科 Calappidae
● 属:カラッパ属 Calappa
動画撮影:
ソデカラッパ 2022年8月14日、2020年4月10日、2019年4月21日(浦添市・カーミージーの海)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。
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