重量挙げのカニチャンピオン!?大きい石でも簡単にひっくり返す
沖縄の浅い砂地に広がる海草藻場には、サンゴ礁の石のかけらがたくさん転がっています。ふつうなら、石は少し砂に埋もれているはず。ところが、手のひらサイズの石が、海草の上に乗っていることがあります。そんな石をひっくり返してよく見ると、穴の奥に2センチくらいのカニが隠れています。イボテガニの仲間です。
小さくて地味なカニですが、びっくりするくらいの力持ち。自分の何十倍もの大きさの石を簡単にひっくり返し、穴の中に潜り込んで、石を動かして歩きます。砂地に石を引きずった痕が残っていたり、海草に乗っかった石があったりしたら、このカニが住んでいるかもしれません。
ヤドカリは、成長するにつれて体の大きさに合う貝殻を探して交換しますが、イボテガニはどうでしょう?…多分、ちょうど良い穴の空いた、背負える大きさの石を探すんじゃないかな。でも、カニが入っている穴をよく見ると、入り口の辺りが白っぽくなっていて、どうやら自分で穴の入り口を削っているようです。サンゴ礁の石はもともとサンゴの骨格で、穴ぼこも多いし、石としては柔らかく削れやすいので、カニが自分で加工することができるんですね。
石の下や割れ目、穴に隠れて暮らすカニはたくさんいるけれど、住んでいる石を運んでしまうカニはそんなにいません。カニの重量挙げがあったら、ライト級チャンピオンかもしれませんね!
Vol. 56 イボテガニの仲間
Actumnus sp.
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:ケブカガニ科 Pilumnidae
● 属:イボテガニ属 Actumnus
動画撮影:
イボテガニの仲間 2022年4月10日(浦添市 てぃだ結の浜)
2019年9月28日(浦添市 カーミージー)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。
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