戦没者眠る激戦地の土「辺野古に持って行くのは反対」…沖縄戦遺族らが抗議集会で訴え 「有事想定」政府の動きに懸念も 沖縄・糸満


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海勢頭豊さんと「月桃」を口ずさむ人たち=4日午後、糸満市米須の魂魄の塔(喜瀬守昭撮影)

 戦没者への鎮魂の祈りを込めた糸満市米須の「魂魄(こんぱく)の塔」の前で開かれた「戦没者遺骨の尊厳を守る集会」。鉱山から数百メートルの距離にあり、一帯は沖縄戦でおびただしい数の住民や日本兵が亡くなった場所でもある。遺族らは切々と訴え、参加者は沈痛な面持ちで聴き入った。沖縄戦で亡くなった人々を思い起こし、土砂採掘への反対と沖縄が再び戦場になる危機感を共有した。

 集会には、沖縄戦体験者や遺族、各地の島ぐるみ会議、沖縄戦の平和ガイドら約150人が参加。手作りの横断幕やプラカードでそれぞれの反対の思いを訴えた。

 沖縄陸軍病院南風原壕で平和ガイドも務める、南風原町の島ぐるみ会議の大城逸子さん(64)は「新年からこういうことをしないといけないのは悲しい。子や孫に『帰っておいで』と言える沖縄じゃない」と悔しさをぶつけた。遺族が両親を失った悲しみや、南部で目撃した悲惨な戦場の様子を語ると、涙を流してうなずく姿が見られた。

 南部の島ぐるみ会議のメンバーは、大勢の人々が亡くなった、沖縄戦跡国定公園でもある南部の土地の意味に言及し、「戦没者遺骨を守ることは全国の問題でもある」と指摘した。「沖縄の闘いに連帯する関東の会」も参加し、埼玉で17議会が遺骨の混じる土砂の採取中止を求める意見書を可決したことを紹介した。

 集会では「台湾有事」を想定した政府の動きに懸念の声も相次いだ。呼び掛けた遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんは「今度はわれわれが戦没者になろうとしている。沖縄を二度と戦場にさせないため、一緒に声を上げてほしい」と訴えた。

 最後に海勢頭豊さんと「月桃」を合唱し、平和を願う歌声が、かつての激戦地に響き渡った。那覇市から参加した82歳の女性は叔父を南部で亡くしたといい「戦没者の眠っている土地の土を辺野古に持って行くことは反対。具志堅さんが頑張っているし、応援したいと思う」と話した。
 (中村万里子まとめ)