prime

我々の原点と未来 星明彦・沖縄総合事務局運輸部長<仕事の余白>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 12月、仕事で倉敷、信州、飛騨高山、黒部・砺波を巡った。そこには、民藝や生活様式などを通じ伝わった日本の美や誠を今に形にし、優しく人々に伝えようとする方々がいた。この年末は、頂いた宿題を、沖縄の目線から澄んだ心で考えようと、芭蕉布の里、大宜味村喜如嘉集落で過ごす機会を頂いた。

 託された肝、真玉とは何か。豊かな心と社会、自然を構成し命の循環を生む琉球の誠、美とは何か。これは幸せや命の答え、原点を探すような作業で簡単に言葉にならないが、労苦多き各時代の断面の中で、これに誠実に応え、未来の世代に光を見せようとした先達の力強い足跡に触れ、その温かさに思わず涙が出た。

 現実の話になるが、先日都市計画審議会で、これからの沖縄の暮らし・都市のあり方について話をさせていただいた。欧州には、生き方についての理念を体現するものとして都市をつくる伝統がある。沖縄には、適切な都市計画がないまま戦後復興の道のりを歩んだ不幸な歴史がある。しかし、美しい生き方を現す大事な寄言や生活様式があり、先輩方の残した礎がある。例えば1973年の名護市総合計画に未来への温かい眼差(まなざ)しを見た。

 我々も、沖縄の真の豊かさを未来に伝えなければならない。経済・環境・社会が正しく循環・調和し、住まう人・訪れる人一人一人の心を育む、また生活と滞在、自然、社会の質が向上する美しい暮らし・観光のあり方を、先輩方や世界の仲間と共に丁寧に形にしていきたい。